下請代金支払遅延等防止法


 (目的)
第一条 
 この法律は、下請代金の支払遅延等を防止することによつて、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。



 (定義)
第二条 
 この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品又はその半製品、部品、附属品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託することをいう。

2 
 この法律で「修理委託」とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。


 この法律で「親事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
 一 資本の額又は出資の総額が三億円を超える法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本の額若しくは出資の総額が三億円以下の法人たる事業者に対し製造委託又は修理委託をするもの
 二 資本の額又は出資の総額が千万円を超え三億円以下の法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者に対し製造委託又は修理委託をするもの


 この法律で「下請事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
 一 個人又は資本の額若しくは出資の総額が三億円以下の法人たる事業者であつて、前項第一号に規定する親事業者から製造委託又は修理委託を受けるもの
 二 個人又は資本の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者であつて、前項第二号に規定する親事業者から製造委託又は修理委託を受けるもの


 資本の額又は出資の総額が千万円を超える法人たる事業者から役員の任免、業務の執行又は存立について支配を受け、かつ、その事業者から製造委託又は修理委託を受ける法人たる事業者が、その製造委託又は修理委託に係る製造又は修理の行為の全部又は相当部分について再委託をする場合(第三項第一号又は第二号に該当する者がそれぞれ前項第一号又は第二号に該当する者に対し製造委託又は修理委託をする場合を除く。)において、再委託を受ける事業者が、役員の任免、業務の執行又は存立について支配をし、かつ、製造委託又は修理委託をする当該事業者から直接製造委託又は修理委託を受けるものとすれば前項各号のいずれかに該当することとなる事業者であるときは、この法律の適用については、再委託をする事業者は親事業者と、再委託を受ける事業者は下請事業者とみなす。


 この法律で「下請代金」とは、親事業者が製造委託又は修理委託をした場合に下請事業者の給付に対し支払うべき代金をいう。



 (下請代金の支払期日)
第二条の二
 下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。


 下請代金の支払期日が定められなかつたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。



 (書面の交付等)
第三条 
 親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
2 
 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。



 (親事業者の遵守事項)
第四条 
 親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 一 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。
 二 下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。
 三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
 四 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
 五 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。
 六 下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させること。
 七 親事業者が第一号若しくは第二号に掲げる行為をしている場合若しくは第三号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の一に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。

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 親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、次の各号に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
 一 自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること。
 二 下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。



 (遅延利息)
第四条の二 
 親事業者は、下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかつたときは、下請事業者に対し、下請事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。



 (書類等の作成及び保存)
第五条 
 親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、公正取引委員会規則で定めるところにより、下請事業者の給付、給付の受領、下請代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成し、これを保存しなければならない。



 (中小企業庁長官の請求)
第六条 
 中小企業庁長官は、親事業者が第四条第一項第一号、第二号若しくは第七号に掲げる行為をしているかどうか若しくは同項第三号から第六号までに掲げる行為をしたかどうか又は親事業者について同条第二項各号の一に該当する事実があるかどうかを調査し、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。



 (勧告等)
第七条 
 公正取引委員会は、親事業者が第四条第一項第一号、第二号又は第七号に掲げる行為をしていると認めるときは、その親事業者に対し、すみやかにその下請事業者の給付を受領し、その下請代金若しくはその下請代金及び第四条の二の規定による遅延利息を支払い、又はその不利益な取扱いをやめるべきことを勧告するものとする。


 公正取引委員会は、親事業者が第四条第一項第三号から第六号までに掲げる行為をしたと認めるときは、その親事業者に対し、すみやかにその減じた額を支払い、その下請事業者の給付に係る物を再び引き取り、その下請代金の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことを勧告するものとする。


 公正取引委員会は、親事業者について第四条第二項各号の一に該当する事実があると認めるときは、その親事業者に対し、すみやかにその下請事業者の利益を保護するため必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。


 公正取引委員会は、前三項の規定による勧告をした場合において親事業者がその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表するものとする。



 (私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律との関係)
第八条 
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第四十八条、第四十九条、第五十三条の三及び第五十四条の規定は、公正取引委員会が前条第一項から第三項までの規定による勧告をした場合において、親事業者がその勧告に従つたときに限り、親事業者のその勧告に係る行為については、適用しない。



 (報告及び検査)
第九条 
 公正取引委員会は、親事業者の下請事業者に対する製造委託又は修理委託に関する取引(以下単に「取引」という。)を公正ならしめるため必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。


 中小企業庁長官は、下請事業者の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。


 親事業者又は下請事業者の営む事業を所管する主務大臣は、中小企業庁長官の第六条の規定による調査に協力するため特に必要があると認めるときは、所管事業を営む親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員にこれらの者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。


 前三項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。


 第一項から第三項までの規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。



 (罰則)
第十条 
 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、三万円以下の罰金に処する。
 一 第三条第一項の規定による書面を交付しなかつたとき。
 二 第五条の規定による書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。



第十一条 
 第九条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。



第十二条 
 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。



   附 則
1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。
2 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を次のように改正する。
  〔次のよう略〕



   附 則〔平成一二年一一月二七日法律第一二六号抄〕



 (施行期日)
第一条 
 この法律は、公布の日から起算して五月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。〔後略〕



    〔平成一三年一月政令三号により、平成一三・四・一から施行〕



 (罰則に関する経過措置)
第二条 
 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。


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