【民】 21 残された財産の行方は… 【刑】 26 他人の名前で文章を作ると…
【刑】 22 どこまで大丈夫? 【民】 27 あなたの物じゃなかったの?
【刑】 23 判決後の救済措置… 【民】 28 手にしてないのに…
【労】 24 懲戒処分されるとき… 【民】 29 お金と物を交換…
【民】 25 絶対欲しいものなら… 【民】 30 お金で物を借りる…

 





















第弐拾壱回 残された財産の行方は・・・『相続』

 人の財産的な権利義務関係を、その者の死んでしまった後に特定の者が受け継ぐ者を相続人と言います。相続は被相続人の死亡によって開始されます。相続人になる者は民法で決められています。まず配偶者は必ず相続人になります。その他に、●子(子が無ければ直系尊属)子も直系尊属もいない場合は兄弟姉妹が配偶者と財産を分け合うことになります。

 それそれの相続分は、死亡する前に遺言によって決めておくことも出来ますが【第8回を参照】、それがない時は法律の規定によります。相続開始前に相続人になるはずだった子が死亡してしまった場合、その子の直系卑属(孫・曾孫など)が、代わりに相続することが出来ます。これを代襲相続といい、卑属の生活を保障しています。

 相続人が何人もいるときは、相続した財産は全員で共有することになり、その後、話し合いによって決めます。話がまとまらない時は、家庭裁判所に決めてもらいます。また、相続がマイナスの時は、その相続を放棄することができます(膨大な借金など)。ただし、3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てないといけません。

 

    妻・子供二人-------------- 妻(1/2)・子T(1/4)・子U(1/4)

    妻・子供なし-------------- 妻(2/3)・死者の父(1/6)・死者の母(1/6)

    妻・子供二人(1人は死亡)---- 妻(1/2)・子(1/4)・孫T(1/8)・孫U(1/8)

    妻・死者の兄-------------- 妻(3/4)・兄(1/4)

 

  ※参考条文---民法882条









































第弐拾弐回 どこまで大丈夫?…『通貨偽造』

 どこから通貨偽造、つまり【ニセ札】になるのでしょうか。子供銀行なんて書かれたお札(?)や、紙に『壱万円』と書いたものは偽札として扱うのでしょうか。

 判例では、「人が不用意にこれを一見した場合に真正の銀行券と思い誤る程度」としています。ですから、ルーペ等でじっくり見ないと分からない…なんて必要はありませんパッと見たとき、本物に見えれば立派な通貨偽造になります。たとえばお札の表裏をカラーコピーして張り合わせても通貨偽造にあたります。また、お札の4分の1だけ本物で残り部分をハトロン紙を貼り付けて、四つ折りにしておけば騙されてしまいます。これも変造として罪を負います(最高裁1975年6月13日)。

 通貨偽装は社会全体の経済が根幹からマヒさせる恐れがあるので、無期か3年以上の懲役という、それなりの罪を負うことになります。さらに刑法153条では準備をしただけで最長5年の懲役です。

 しかし、『芸術作品』として一万円札を作ったとします。この場合「行使の目的で」作ってはいません。よって無罪になります。さらに、その壱万円札を友人にプレゼントしました。友人はその札を使いました。…これは罪になります。友人はそれを使う事を知っていてプレゼントした場合、あげた人も罰せられます

 

  ※参考条文---刑法148条・刑法150条









































第弐拾参回 判決後の救済措置…『執行猶予』

裁判で『有罪』の判決をうけても、刑務所に入らないことがあります。この制度を『執行猶予』と言います。確かに、罪を犯したものの、情状酌量により刑務所に入れるまでも無いと判断した場合です。しかし、条件があります。まず、『3年以下の懲役か禁固』か『50万円以下の罰金』を言い渡されたものに限ります。ですから、ドラマや小説で「被告人を懲役8年、執行猶予3年――」なんて言っていますが、実際には有り得ません。比較的軽い罪でなければ、執行猶予はつかないからです。また、過去に禁固以上の罪を犯した者も、執行猶予にはなりません。ただし、5年以内に再び禁固以上の刑を受けていない者は、対象になります。

 執行猶予の期間は、1年以上5年以下です。その期間中、自由放免になったわけではなく、けいの執行を『猶予』されているだけに過ぎないので、何か罪を犯すと猶予は取り消されます。

 また、『制約』が設けられる場合もあり、少年法だけと思われている『保護観察』「成人」にもつけられます。初犯や出所してから5年経っている場合は、保護観察に付されない場合も多いですが、悪いことをしそうな人には厳しい条件がつけられ、大半の行動をチェックされます。

 

  ※参考条文---刑法25条









































第弐拾四回 懲戒処分されるとき…『解雇』

 まず、従業員は会社に対して弱い立場にあると言えます。そのため、従業員を守る法律があります。しかしながら、法が守っているからといって、好き勝手に言動してはいけません。会社側にも『解雇』という手段をもっています。解雇は一般に、企業への貢献度が低い・身体機能の低下・服務規定に違反…などの『普通解雇』服務規程や社内秩序に違反し、その程度がおもい『懲戒解雇』会社が退職するように促す『諭旨解雇』の3つがあります。諭旨解雇は形式的には自己都合退職ですが、経歴を傷つけないようにという配慮ですが、実質上の解雇と同じです。

 さて、企業側から従業員を解雇するには、正社員であれば予め『解雇予告』を30日前に行うか、30日以上の賃金(予告手当)を支給しなければいけません。労基法20条1項   ただし、従業員の重大な過失や天災などの止むを得ない場合はこの限りではなく、解雇することが出来ます労基法20条1項 但書

 職場の秩序を守るため、企業では制裁規定(懲戒処分)を就業規則に定めているのが一般的です。この中で、最も重いのが前途の『懲戒解雇』です。もっとも懲戒処分の適用が相応しくない場合は『懲戒権の濫用』として処分が無効になる場合もあります。

 

    《一般的な懲戒処分の種類》

戒告(かいこく)・譴責(けんせき)

    処分の中では最も軽い。注意を受け始末書を書く

減給

    賃金を一時的に減らす。1回の額が1日分の半額を超え、またその減給総額は賃金総額の1割を超えない労基法91条

出勤停止

    一時的に出勤を停止する。その間の賃金は支払われない。また、勤続年数にも算入されない。

降格

    職位を落とす

諭旨解雇(退職)

    説論のうえ、依頼退職

*****該当する行為*****

正当な理由なく無断欠勤(多い)・職場の秩序を乱す・業務上の怠慢、監督不行届き・会社の信用、名誉を害した…

 

懲戒解雇

    処分の中ではもっとも重い。退職金を支給されず、即日解雇。

***該当行為***

正当な理由なく14日以上の欠勤・重要な職歴の偽り、不正な方法で採用されていた・社内で暴行、脅迫

会社の機密を漏洩・懲戒処分を数回受けた…









































第弐拾五回 絶対欲しいものなら…『売買の解除』

 あなたが、ある骨董屋に行ったとします。その時、とても気に入った壷がありました。しかし、あなたはその壷を買えるだけのお金を所持していませんでした。そこで、手持ちのお金を手付金として支払い、残りは明日必ず持ってくるから、絶対に売らないでくれと頼み、店を出ました。

 次の日、残りのお金を持って骨董屋に行きましたが、その壷はありません。店員に尋ねると、あの後、同じ壷を気に入って金額も2倍払うから売ってくれ、と言うので、売ってしまったようです。そして、預かっていたお金は2倍にして返すと言っています。さて、あなたはどうしますか?

 少々長い前置きになってしまいましたが…この骨董屋に法的な責任があるのでしょうか?民法557条では、《売主は手付金の倍額を買主に支払えば、その売買契約を解除しても良い》と規定しています。従って、骨董屋が言う通り、手付金を2倍に返してしまえば何の責任も負いません

   ※他方、あなたが欲しくなくなった時は、その手付金を放棄すれば解除できます。

このような手付金のことを『解除手付』と言います。手付というのは通常、解除手付です。

 そうなると、手付を支払っても品を手に入れることができない(又は、売れない)と言うことになります。では、確実に手に入れるにはどうすれば良いか。その場合は解除手付の交付ではなく、売買代金の『内金払い』としておきます。要するに、売買契約が解除されるのを封殺してしまうのです。手付も内金も、価格の一部となるのは同じですが、解除手付金交付は、売る側・買う側の双方に約束を解除する権利を与えているのに対して内金払いの方は、この解除権がなく、必ず実行しなくてはいけません。もしも、約束を守らなかった場合は、当然損害賠償責任が生じます。高が言葉ですが、気を付けないと大変なことになるかも知れません。確認は怠らずにっ

  ※参考条文---民法557条









































第弐拾六回 他人の名前で文章を作ると…『文章偽造罪』

以前、《通貨偽造罪》を取り上げました。他にも有価証券偽造罪印章偽造罪など、いくつかあります。これらの偽造罪は社会的信用に対する罪とされています。またこれらの偽証罪の成立には、本物として使おうという目的が必要です。今回はその中から《文章偽造罪》について、書きたいと思います。

例えば、AがBの名前を使って勝手に領収書を書いたらどうなるでしょう。

権限のないものが勝手に他の人の名前を使って文章を作ることを文章偽造といい、公務員が職務上すべき文章(免許証・住民票など)を偽造した時は公文書偽造罪公職を離れた個人の文章は私文書偽造になります。

文章偽造罪が守ろうとしているものは社会的信頼です。文章に書いてある名前と書いた者の名前が同じであることを保護しているのです。では、前途の場合、Aが書いた嘘の領収書の場合はどうでしょうか。そもそもこのように内容に偽りの文章を作ることを虚偽文書作成といいますが、公務員が職務上すべき文章を作成した場合は虚偽文書作成罪になりますが、普通の人が作成しても罪にはなりません。上京してきて、親に宛てた手紙に《高い給料を貰っています。》って書いただけで犯罪になるのは厳しいものがあるでしょう。

ただ、例外もあります。医師が公務所に提出する書類を偽ると虚偽診断書等作成罪になります。

  ※参考条文---刑法148条 ・ 刑法150条









































第弐拾七回 あなたの物じゃなかったの?…『即時取得』

 今回は動産について書きますね。土地と家以外は動産だと思ってください。この動産の公示方法ですが、物を現実に支配する占有によってなされます。しかし、現実に物を持っていても持っている本人が本当の所有者か分かり難いものです。動産は読んで字の如く頻繁に取引され、動く財産として次々と移転していきます。不動産以上に取引の安全性を図る必要があります
 

 例えば、貴方がAさんから自動車を買って受け取ったとします。しかし、実はAさんの自動車ではなくBさんからの預かり物でした。Aさんは所有権者ではないわけですから、そのAさんから買った貴方は所有権を手にすることは出来ません。
 貴方はAさんが現実に自動車を持っていた為、所有者だと信じて取引したわけですから、法が貴方の信頼を保護してくれます。でないと取引そのものの安全を害してしまうからです。

 Aさんは所有権者ではありませんが、現実に持っていた為本物の所有権者に見えてしまい、それを貴方が落ち度なく信頼して買ったのであれば、貴方は所有権を取得できる、とされています。これを即時取得といい、「公示があるから権利もある」という信頼を公信の原則により保護し、動産取引の安全を図る制度です。即時取得が認められると所有権が認められ、Bさんには返さなくても良いことになります。

  ※参考条文---民法178条 ・ 民法192条

 










































第弐拾八回  手にしてないのに… 『危険負担』

貴方がAさんから家を買うことになりました。売買契約を済ませ、明け渡し…の前に火事により消失してしまいました。もしも、売主に落ち度があれば、債務者の責任で履行が不可能になった訳ですから債務不履行になり、貴方はAさんに損害賠償を請求することが出来ます。

 では、隣家からの延焼により消失してしまった場合はどうでしょうか
Aさんには全く落ち度がなかった場合、Aさんを非難できない形で履行が出来ないので、債務は消滅してしまいます。では、貴方はAさんに代金を払うという債務はどうなるでしょうか。

 このように、双方契約において一方の債権が債務者の責任によらないで履行不能になった場合、他方の債務を存続させるか否かが問題になってきます。これを、損失という『危険』をどちらが『負担』するかという意味で『危険負担』といいます。

 公平を第一に考えれば、一方の債務も消滅させて無かった事にすれば良いようも思いますが、民法は、債務の内容や債権者の落ち度の有無に応じて、もう一方の債務は消滅させないという立場も併用しています。条文上、貴方が危険を負担することになり、家を手にすることはできないけれど、代金の支払いは免れないとされています。









































第弐拾九回  お金と物を交換… 『売買』


 売買契約とは当事者の一方(売主)がある財産権を相手(買主)に移転することを約束し、相手がその対価として代金を支払う約束をする契約のことです(財産権の中には所有権や債権だったりといろいろあります)。つまり、『売買とは物(財産権)とその代金を交換』する約束です。

 さて、この売買契約が成立すると、買主は支払いの義務を負い、売主は物を移転させる義務を負い、さらに物そのものをも引き渡す義務を負います。また、不動産等で登記などの対抗要件を備えるのに協力をしなければなりません。尚、他人の所有物を売る契約をすることは法律上問題ありませんが、その場合は売主がその物を取得して、さらに買主に移転する義務を負うことになる訳です。

 この売買契約は『物と代金が対価関係』になければいけません。たとえば、程度の良い中古車だと思いその対価として代金を支払ったにもかかわらず、実際はドアの隙間から雨漏りが…という場合などでは対価関係が崩れてしまいます。このような場合は、対価関係を修正して当事者間を公平にするために、売主には損害賠償などの責任を負わせてバランスをとらせるようになっています。

※参考条文---民法555条








































第参拾回 お金で物を借りる…『賃貸借』

 前回の売買に次いで重要になってくるのが賃貸借です。賃貸借とは、賃貸人(当事者)が賃借人(相手)に物を使用させて、その対価として賃料を支払う約束の契約です。すなわち、お金を払うことで物を借りることができるわけです。

 賃貸人は使用させる義務を負うので、貸している最中に壊れたりしたら直さなければなりません。また、賃借人が管理するのに必要なお金を立て替えた場合は、それを返さなければなりません。これに対して賃借人は、賃料を支払う義務と、借りたものを保管・管理する義務を負います。つまり、他人に貸してはいけません。

 基本的に賃借権は債権なので、契約当事者(賃貸人)にしか主張することができません。しかし、不動産については、対抗要件を備えていれば誰にでも主張できるという効果が認められるようになってきました。例えば、土地を借りている場合、賃貸人が第三者に売却してしまったら新しい所有者に賃借権を対抗できないことになってしまうからです。

 民法上賃借権の対抗要件は登記ですが、賃借人を保護するため借地借家法により、建物の場合は引渡し土地の場合は建物の登記がされていれば対抗要件を具備したことになります。

※参考条文---民法601条



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