【独】 11 持ち株会社とは… 【刑】【民】 16 重要な意味を持つ印鑑…
【刑】 12 1つの犯罪で2つの刑… 【刑】 17 貸した金を取り戻す為に脅したら…
【刑】 13 悪口を言うと… 【刑】 18 パトカーをガンガン蹴ったら…
【刑】 14 長時間束縛たら… 【刑】 19 『出来心』ではすまされない…
【刑】 15 科料が支払えなければ… 【刑】 20 お釣りが多いのに黙っていても…

 





















第壱拾壱回  持ち株会社とは・・・『独占禁止法改正』

まず、持ち株会社とは、複数の企業の株式を保有し、これらの企業の中核となり、経営を統括する企業を言います。俗にいう『親会社・子会社』とは異なり、中核企業そのものは事業活動をせず、統括と管理のみです。戦前の財閥にあたる存在です。戦後は独占禁止法で持ち株会社の設立を禁止していました。しかし、世界競争の激化につれて日本もそれに立ち向かうためにも、幾つかの例外を除いて解禁となったわけです。(1997.5)

  持ち株会社のメリットとして、事業母体と経営母体が別組織の為、他業務での失敗が決裁システムに影響を与えにくので、銀行決裁の業務に対するリスクの回避ができる。また、1つの持ち株会社の傘下に集結しておけば、互いの不得意分野を補完できる、すなわち競争力の向上などがあります。

【EX】1999.8に、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の3行が共同の持ち株会を設立することを決めた。誕生すれば、資産総額141兆円の世界一のメガバンクになる。









































第壱拾弐回  一つの刑で二つの刑・・・『外国判決の効力』

 外国で犯罪を犯し裁判を受けても、同じ犯罪で日本でも裁判にかけられる。刑法2条・3条で国外犯を刑法の対象にしているとはいえ、普通は犯罪が起きた国にも法律があり、国内で発生した犯罪を対象とした法律があるわけです。で、犯罪を犯した人は現地で裁判を受けることが多い。しかし、それで日本の裁判権が消えてしまうのでは不都合が生じるので、刑法5条で『外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為においてさらに罰することを妨げない。』としています。現地で『死刑』になってしまえばそれまでですが、生きて日本に帰ってきた場合は、もう一度、日本の裁判にかけられるのです。

 たとえば、『日本赤軍※1のメンバーの一人が外国で無期懲役の判決が確定しています。日本が身柄を引き渡すように要求したのも、『刑法5条』を前提としたものです。他国の空港で大量殺人という大きな犯罪を犯している以上、日本当局が自らの手で処罰しようと考えたのです。

 ただし、日本で新たに判決が下される場合、外国での判決を全く無視するのではなく、『刑の執行を減軽し、又は免除』することになっています。たとえば、外国で懲役10年の判決を受けたものが、その刑期を終え帰国して、日本でも同じく懲役10年の判決を受けても、再び収監されることはないと思います。つまり、有罪判決を下した上で、そのを免除するのです。

 

※1【日本赤軍】

日本赤軍は1971年、パレスチナ入りし、パレスチナ解放人民戦線の支援を受けて結成したもの。
当初は「アラブ赤軍派」と名乗り、74年以降、「日本赤軍」と自称。反イスラエル闘争を行い、「アラブの英雄」としての扱いを受ける

---日本赤軍が原因・主犯とされる主な事件---
1972年   テルアビブ空港襲撃事件
  73年   日航ジャンボ機ハイジャック事件
  74年   ハーグ・仏大使館占拠事件
  75年   クアラルンプール米大使館占拠事件
  77年   日航機ハイジャック・ダッカ事件

赤軍派の母体「ブント(共産主義者同盟)」は1958年「レーニン主義の復権」を唱えて結成された共産主義系急進勢力。
ブントは1960年には全学連を指揮して「反安保闘争」を展開。以後分裂を繰り返し、1969年の第二次安保闘争後最終的に10数グループ
に分かれ、この中の一つが赤軍派で、分裂した中でも「武装蜂起」を目指す最も過激な部類とされている。

1975年8月、クアラルンプール米大使館占拠事件では、日本赤軍は大使館で人質52人を取り、拘留中のメンバーらの釈放や、脱出用
日航機提供を要求。当時の三木首相は「人命は地球より重い」という発言をして超法規措置を決定。その後日本赤軍は日本脱出に成功、1977年リビア当局に投降。









































第壱拾参回  悪口を言うと・・・『名誉毀損罪』

 Aさんの社会的評価を害するような事を言いふらしたとします。その場合何罪になるのでしょうか。答えは、人の社会的評価を害する恐れがあることを不特定・多数の人に言いふらす犯罪、『名誉毀損罪』です。この名誉毀損罪が守ろうとしているのは『法人も含む人に対する社会的評価』です。社会的評価を害するものであれば、例えそが事実でも名誉毀損罪が成立します。

 では、○○スポーツ新聞社が「□□は、汚職をしているようだ」と、報道した場合、□□は名誉毀損罪を訴えることはできるのでしょうか。○○スポーツ新聞社には『表現の自由』という憲法で守られています。そこで、刑法は、『公共の利益のためにした報道(発表)で、その指摘したことが真実であると証明できた時は罰しない』としました。よって、○○スポーツ新聞社は事実であることを証明すれば罰せられないのです。しかし、証明することは難しく、真実であっても罰せられる危険性を伴います。そこで判例も、真実であることを証明できなくても、用いた資料・根拠などに照らし合わせて「信じても、おかしくない」という場合には処罰しないとしています。

[名誉を害する記事]-----[公共の利益のため・事実を証明できた]---(YESなら無罪)---[信じてしまっても仕方がない]---(YESなら無罪)---[名誉毀損罪]









































第壱拾四回  長時間束縛すると・・・『監禁罪』

 部屋や乗り物の中に閉じ込めて外に出られないようにするのは何罪でしょう。人を一定の場所から脱出できないようにしています(こんな事件が最近多いですね…)。このようにひとの意思に反して身体の移動の自由を奪う犯罪監禁罪といいます。監禁罪が守ろうとしているのは、身体の場所的移動の自由です。脱出はできなくても著しく困難にすれば成立するので、自動車やバイクなどに乗せて疾走したり、船に乗せて沖に連れ出しても成立します。「少しでも動いたら殺すぞ」つて言ったとしても、脅迫して心理的に逃げられないようにしても監禁罪です。また、どじ込められた意識がなくても意思に反して脱出できなければ良いので、鍵が壊れてしまって、内側から開けてくれと言われ、「できません」とウソをついて脱出できない場合も成立します。因みに、監禁した者は3ヶ月以上5年以下の懲役を科せられます。また、これによって死傷させた場合、障害の罪と比較して、重い方の刑により処罰されます。

 

− 参考条文 −     刑法     220条・221条









































第壱拾五回  科料が支払えなければ・・・『罰金と科料』

 まず、罰金と科料の違いは金額にあります。罰金は一万円以上、科料は千円以上一万円未満。また、『拘留』は科料と同レベルの刑で、1日以上30日未満、拘留所にされます。

    罰金や科料が支払えない場合は、労役場留置という名の『お仕置き場』に送られ〔18条〕、罰金が完納できない者は1日以上2年以下、科料が完納できない者は1日以上30日以下の強制労働が科せられます。で、その期間は、刑務所内の労役場に留置することになるので、事実上懲役囚と同等の待遇です。

 科料の場合、わずか一万円を支払わないというだけで、一ヶ月間も働くハメになってしまう可能性もあるので、さっさと支払ったほうが良いでしょう (^^;

 ※科料の場合⇒確定してから10日〔罰金は30日〕を過ぎると本人の承諾無しに留置することができます。









































第壱拾六回  重要な意味を持つ印鑑 『実印』

 印鑑には「実印」「銀行印」「認印」等いろいろ存在します。特に【実印】は日本の慣習上本人の意思であることの証しとして特に重要な意味を持っています。実印は、住所地の市区町村役所に届け出た印鑑であり、三文判の印鑑でも実印にすることができます。※規定については、各市区町村がそれぞれの条例で取り扱い方法を定めています。

 印鑑をめぐるいろいろなトラブルが発生します。代表的なものでは『捨て印』です。後日訂正などが生じた場合に、あらかじめ文書の余白に訂正印を押すアレです。後で内容を書き換えられる危険をはらんでいるからです。求められるまま押すのはちょっと…。

 なお、印鑑が日本国の社会において重要な役割を果していることを反映して、刑法においても独立した[章]を持っています(164〜167条)

 公印等偽造・不正使用罪、私印等偽造・不正使用罪などで、3年以下の懲役です。

 

     --その他のトラブル--

・身に覚えのない契約書が送られてきた⇒印影から偽造された

回避方法例1 → 簡単に創造ることができる三文判は危険。

回避方法例2 → 本人にしか分からないマーク等をつけておく

回避方法例3 → 本人でも判読し難い書体は、すり返られる危険もある









































第壱拾七回  貸した金を取り戻す為に脅したら・・・『恐喝』

 「お前の会社を潰されたくなければ金を払え」…、などと脅してお金をとったら何罪になるでしょうか。相手が抵抗出来ないとは言えない程度の暴行・脅迫で財物を出させたり、財産の利益を移転させる犯罪を『恐喝』と言います。

 では、お金を貸しているのになかなか返してくれないからと「早く支払わなければ、子供を売り飛ばすぞ」と脅し、借金を弁済させた場合はどうなるでしょう。お金を返してもらうのは正当な権利ですので無罪とする説もありますが現実問題、こんな取立てで無罪は・・・。そこで、原則的には『恐喝罪』の成立を認めています。

 勿論、例外あります。例えば、正当な権利の範囲内で、実力を行使しなければならならい必要性があり、社会通念上認められるような手段を用いた場合です。この場合は『恐喝罪』は成立しません。しかし、恐喝罪は成立しなくても、手段はやはり悪い・・・となれば、『脅迫罪』や『暴行罪』の成立を認める場合があります

     ※参考条文---刑法249条









































第壱拾八回  パトカーをガンガン蹴ったら・・・『公務執行妨害罪』

 何か悪いことをして警官に逮捕されそうになったのでパトカーを蹴りまくった。このように職務を執行中の公務員に対して暴行・脅迫を加えると公務執行妨害罪になります。「職務を執行中」とは、現在起こっていることだけに限らず職務の開始直前・直後や待機状態といった、職務の執行に深い関りがある場合も含まれます。また、暴行など直接公務員に向けられていれば体に向けられている必要はなく、間接的でも成立します。脅迫は人を恐れられる程度で良く、第三者に対する脅迫でも、職務の執行を妨害を出来るようなものなら良いとされています。

 では、あなたが街を歩いていて、突然「泥棒!」と叫ばれ、警官がかにも言わずに逮捕してきたので暴れたとしますこの場合はどうなるでしょう。公務執行妨害になるでしょうか。法律上、逮捕するには逮捕すると言うこととその理を相手に告げなければいけません。なので、上の場合、重要な手続きをしていませんので法律違反をしていることになります。法律違反の公務を守る必要はないので公務執行妨害の公務にはあたりません。

  ※参考条文---刑法95条









































第壱拾九回  『出来心』ではすまされない・・・『窃盗罪』

 万引き・スリ・空き巣・自転車泥棒、、、人の財産を奪う典型的な犯罪、『泥棒』ですが、他人が持っている(=占有)物をこっそり奪う犯罪を『窃盗罪』と言います。同じような行為でも、他人から預かっているものを奪えば『横領罪』拾ったものを自分のものにしてしまえば『遺失物横領罪』または『占有離脱物横領罪』になります。ちなみに、『窃盗罪』は10年以下の懲役、『横領罪』は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料です。

 では、問題です。喫茶店での出来事です。ふと見ると隣の席に「置き忘れ」のカバンがありました。ほんの出来心でそれを持って帰ってきました。このときの罪名は何でしょうか。

 う〜ん、微妙ですよね。所有者の手から離れていますから、落し物として考えると遺失物横領罪になりそうです。しかし、お店に忘れていった場合、持ち主が取りに来るまで預かっているのが普通ですから、お店の管理する物を盗んでいるから窃盗罪だ、とするのが正解です(判例・通説)。また、盗まれたものを持ち主が犯人から取り返す行為も窃盗罪になります。その理由として、盗まれたものを取り返したいのなら民事訴訟上の手続きを取るべきで個人が取ったり取り返したりするのは好ましくないとされています。つまり、窃盗罪は所有権ではなく、その財物を支配している、という占有状態を保護しているのです。

 

  ※参考条文---刑法235条・254条

 

    #余談ですが、万引きして警備員に補導されて家族が迎えにくるシーンをTVでやってますよね。でも、りっぱな窃盗です。ただ被害金額が少ない、等から厳重注意をうけて返される。日本ではそういうこともありますが、日本人が良く行くハワイやグアムなどではありえません。帰国のチケット取っていようが、仕事があろうが罪は罪。裁判を受けてそれ相当の償いをしないと帰国できません。また、買い物客のバックやカバンに麻薬を入れられ捕まったという話もあります。これは麻薬所持者を見つけた者には懸賞金が出るため、その金目的で入れるそうです。 









































第弐拾回 お釣りが多いのに黙っていても…『詐欺罪』

外食をして、支払いをしようとしたら財布がない・・・。とりあえず、店員に「財布を取ってくる」といったまま店を出てそのまま帰ってしまったら何罪でしょうか。「取ってくる」と店員を騙し、支払いを待っている店から逃げ、支払いを免れました。つまり、人を騙すという行為をし、それにより被害者が騙された。このように、被害者に財物を交付、または、財産上の利益を移転させる犯罪を『詐欺罪』といいます。詐欺罪が成立するには、騙されたことによって騙されなかったらしていたであろう意思表示とは異なる意思表示に基づいて、財物を交付、または、財産上の利益を移転する必要があります。と、いうことは・・・店員に何も言わずに逃げた場合、詐欺罪にはあたらない・・・。この場合、窃盗罪になりそうですが、支払いを免れることは財産上の利益を得たことにすぎません。よって、財物の移転ではないので、窃盗罪にもなりません(しかし、くれぐれもしないように)。また、騙す行為は何もしないということでも構いません。おつりが多いことを知っていながら黙っていると、それも、騙す行為になるわけです。つまり、店員がおつりを返してくれと言わなければ、意志に基づく財産の移転といえるからです。

 

  ※参考条文---刑法246条

 


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