金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律

(平成十四年四月二十六日法律第三十二号)
最終改正:平成一四年七月三一日法律第九八号










(目的)
第一条
 この法律は、金融機関等による顧客等の本人確認及び取引記録の保存に関する措置を定めることにより、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第五十四条及び第五十五条の規定による届出等の実効性の確保並びに公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律(平成十四年法律第六十七号)第一条に規定する公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等が金融機関等を通じて行われることの防止に資する金融機関等の顧客管理体制の整備の促進を図ることを目的とする。



(定義)
第二条
 この法律において「金融機関等」とは、次に掲げるものをいう。
一  銀行
二  信用金庫
三  信用金庫連合会
四  労働金庫
五  労働金庫連合会
六  信用協同組合
七  信用協同組合連合会
八  農業協同組合
九  農業協同組合連合会
十  漁業協同組合
十一  漁業協同組合連合会
十二  水産加工業協同組合
十三  水産加工業協同組合連合会
十四  農林中央金庫
十五  商工組合中央金庫
十六  保険会社
十七  保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第七項に規定する外国保険会社等
十八  証券会社
十九  外国証券業者に関する法律(昭和四十六年法律第五号)第二条第二号に規定する外国証券会社
二十  証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第二十八項に規定する証券金融会社
二十一  投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十八項に規定する投資信託委託業者
二十二  共済水産業協同組合連合会
二十三  信託会社
二十四  無尽会社
二十五  抵当証券業の規制等に関する法律(昭和六十二年法律第百十四号)第二条第二項に規定する抵当証券業者
二十六  商品投資に係る事業の規制に関する法律(平成三年法律第六十六号)第二条第五項に規定する商品投資販売業者
二十七  特定債権等に係る事業の規制に関する法律(平成四年法律第七十七号)第二条第八項に規定する小口債権販売業者(同法第六十四条の規定により小口債権販売業者とみなされる特定債権等譲受業者を含む。)
二十八  不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第二条第五項に規定する不動産特定共同事業者
二十九  貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号)第二条第二項に規定する貸金業者
三十  主としてコール資金の貸付け又はその貸借の媒介を業として行う者で内閣総理大臣の指定するもの
三十一  主として住宅(住宅の用に供する土地及びその土地の上に存する権利を含む。)の取得に必要な長期資金の貸付けを業として行う者で内閣総理大臣の指定するもの
三十二  商品取引所法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第百二十六条第三項に規定する商品取引員
三十三  金融先物取引法(昭和六十三年法律第七十七号)第二条第十一項に規定する金融先物取引業者
三十四  株券等の保管及び振替に関する法律(昭和五十九年法律第三十号)第二条第二項に規定する保管振替機関
三十五  株券等の保管及び振替に関する法律第二条第三項に規定する参加者(前各号に掲げる者を除く。)
三十六  社債等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二条第二項に規定する振替機関(同法第四十八条の規定により振替機関とみなされる日本銀行を含む。)
三十七  社債等の振替に関する法律第二条第四項に規定する口座管理機関(前各号及び次号に掲げる者を除く。)
三十八  日本郵政公社
三十九  前各号に掲げるもののほか、本邦において両替業務(業として外国通貨(本邦通貨以外の通貨をいう。)又は旅行小切手の売買を行うことをいう。)を行う者
四十  前各号に掲げるもののほか、政令で定める者



(本人確認義務等)
第三条
 金融機関等は、顧客又はこれに準ずる者として政令で定める者(以下「顧客等」という。)との間で、金融に関する業務その他の政令で定める業務(以下「金融等業務」という。)のうち預金又は貯金の受入れを内容とする契約の締結その他の政令で定める取引(以下「預貯金契約の締結等の取引」という。)を行うに際しては、運転免許証の提示を受ける方法その他の主務省令で定める方法により、当該顧客等について、次の各号に掲げる顧客等の区分に応じそれぞれ当該各号に定める事項(以下「本人特定事項」という。)の確認(以下「本人確認」という。)を行わなければならない。
一  自然人 氏名、住居及び生年月日
二  法人 名称及び本店又は主たる事務所の所在地

2  金融機関等は、顧客等の本人確認を行う場合において、会社の代表者が当該会社のために預貯金契約の締結等の取引を行うときその他の当該金融機関等との間で現に預貯金契約の締結等の取引の任に当たっている自然人が当該顧客等と異なるとき(次項に規定する場合を除く。)は、当該顧客等の本人確認に加え、当該預貯金契約の締結等の取引の任に当たっている自然人(以下「代表者等」という。)についても、本人確認を行わなければならない。

3  顧客等が国、地方公共団体、人格のない社団又は財団その他の政令で定めるものである場合には、当該国、地方公共団体、人格のない社団又は財団その他の政令で定めるもののために当該金融機関等との間で現に預貯金契約の締結等の取引の任に当たっている自然人を顧客等とみなして、第一項の規定を適用する。

4  顧客等(前項の規定により顧客等とみなされる自然人を含む。以下同じ。)及び代表者等は、金融機関等が本人確認を行う場合において、当該金融機関等に対して、顧客等又は代表者等の本人特定事項を偽ってはならない。



(本人確認記録の作成義務等)
第四条
 金融機関等は、本人確認を行った場合には、直ちに、主務省令で定める方法により、本人特定事項その他の本人確認に関する事項として主務省令で定める事項に関する記録(以下「本人確認記録」という。)を作成しなければならない。

2  金融機関等は、本人確認記録を、前条第一項に規定する預金又は貯金の受入れを内容とする契約が終了した日その他の主務省令で定める日から、七年間保存しなければならない。



(取引記録の作成義務等)
第五条
 金融機関等は、金融等業務に係る取引を行った場合には、少額の取引その他の政令で定める取引を除き、直ちに、主務省令で定める方法により、顧客等の本人確認記録を検索するための事項、当該取引の期日及び内容その他の主務省令で定める事項に関する記録(以下「取引記録」という。)を作成しなければならない。

2  金融機関等は、取引記録を、当該取引の行われた日から七年間保存しなければならない。



(金融機関等の免責)
第六条
 金融機関等は、顧客等又は代表者等が預貯金契約の締結等の取引を行う際に本人確認に応じないときは、当該顧客等又は代表者等がこれに応ずるまでの間、当該預貯金契約の締結等の取引に係る義務の履行を拒むことができる。



(報告)
第七条
 行政庁は、この法律の施行に必要な限度において、金融機関等に対しその業務に関して報告又は資料の提出を求めることができる。



(立入検査)
第八条
 行政庁は、この法律の施行に必要な限度において、当該職員に金融機関等の営業所その他の施設に立ち入らせ、帳簿書類その他の物件を検査させ、又はその業務に関し関係人に質問させることができる。

2  前項の場合において、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3  第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

4  前三項の規定は、日本銀行については、適用しない。



(是正命令)
第九条
 行政庁は、金融機関等がその業務に関して第三条第一項から第三項まで、第四条又は第五条の規定に違反していると認めるときは、当該金融機関等に対し、当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。



(関係行政庁の協力)
第十条
 関係行政庁は、この法律の規定の実施について、相互に協力するものとする。



(主務省令への委任)
第十一条
 この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、主務省令で定める。



(経過措置)
第十二条
 この法律の規定に基づき政令又は主務省令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令又は主務省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。



(主管行政庁等)
第十三条
 この法律における行政庁は、次に掲げる金融機関等の区分に応じ、当該金融機関等に係る事項に関して、それぞれ当該各号に定める行政庁とする。
一  第二条第一号から第三号まで、第六号、第七号、第十六号から第二十一号まで、第二十三号から第二十五号まで、第二十九号から第三十一号まで及び第三十三号に掲げる金融機関等 内閣総理大臣
二  第二条第四号及び第五号に掲げる金融機関等 内閣総理大臣及び厚生労働大臣
三  第二条第八号及び第九号に掲げる金融機関等 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第九十八条第一項に規定する行政庁
四  第二条第十号から第十三号まで及び第二十二号に掲げる金融機関等 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第百二十七条第一項に規定する行政庁
五  第二条第十四号に掲げる金融機関等 農林水産大臣及び内閣総理大臣
六  第二条第十五号に掲げる金融機関等 経済産業大臣及び財務大臣
七  第二条第二十六号に掲げる金融機関等 商品投資に係る事業の規制に関する法律第四十九条第一項に規定する主務大臣
八  第二条第二十七号に掲げる金融機関等 特定債権等に係る事業の規制に関する法律第七十二条第一項に規定する主務大臣
九  第二条第二十八号に掲げる金融機関等 不動産特定共同事業法第四十九条第一項に規定する主務大臣
十  第二条第三十二号に掲げる金融機関等 商品取引所法第百四十八条第一項に規定する主務大臣
十一  第二条第三十四号から第三十七号までに掲げる金融機関等(次号に掲げるものを除く。) 内閣総理大臣及び法務大臣
十二  第二条第三十六号及び第三十七号に掲げる金融機関等のうち国債を取り扱うもの 内閣総理大臣、法務大臣及び財務大臣
十三  第二条第三十八号に掲げる金融機関等 総務大臣
十四  第二条第三十九号に掲げる金融機関等 財務大臣

2  前項の規定にかかわらず、金融機関等のうち証券取引法第六十五条の二第一項に規定する登録を受けた者が同法第六十五条第二項各号に掲げる有価証券又は取引に係る同項各号に定める行為(同条第一項ただし書に該当するものを除く。)を行う場合には、当該行為に係る事項に関する行政庁は、内閣総理大臣とする。

3  内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。

4  金融庁長官は、前項の規定により委任された権限(第九条に関するものを除く。)のうち、次に掲げる行為に係るものを証券取引等監視委員会に委任する。ただし、報告又は資料の提出を命ずる権限は、金融庁長官が自ら行うことを妨げない。
一  第二条第十八号、第十九号及び第三十三号に掲げる金融機関等による行為
二  第二項に規定する行為

5  この法律に規定する行政庁の権限に属する事務(この法律の規定により都道府県知事の権限に属することとされている事務を除く。)の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。

6  第一項から前項までに規定するもののほか、第七条から第九条までの規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。

7  この法律における主務省令は、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣が共同で発する命令とする。

8  この法律の規定により都道府県が処理することとされている事務のうち次に掲げる者に係るものは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
一  農業協同組合法第十条第一項第三号の事業を行う農業協同組合及び農業協同組合連合会
二  水産業協同組合法第十一条第一項第四号の事業を行う漁業協同組合
三  水産業協同組合法第八十七条第一項第四号の事業を行う漁業協同組合連合会
四  水産業協同組合法第九十三条第一項第二号の事業を行う水産加工業協同組合
五  水産業協同組合法第九十七条第一項第二号の事業を行う水産加工業協同組合連合会



(罰則)
第十四条
 第九条の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。



第十五条
 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  第七条の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
二  第八条第一項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者



第十六条
 本人特定事項を隠ぺいする目的で、第三条第四項の規定に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。



第十七条
 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第十四条 三億円以下の罰金刑
二  第十五条 二億円以下の罰金刑
三  前条 本条の罰金刑



(証券取引法の準用)
第十八条
 証券取引法第九章の規定は、第十三条第四項各号に掲げる行為に係る第十六条及び前条第三号に規定する罪の事件について準用する。



   附 則 抄



(施行期日)
第一条
 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。



(経過措置の政令への委任)
第二条
 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。


   附 則 (平成一四年六月一二日法律第六五号) 抄


(施行期日)
第一条
 この法律は、平成十五年一月六日から施行する。



(罰則の適用に関する経過措置)
第八十三条
 この法律(附則第一条各号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条において同じ。)の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。



(その他の経過措置の政令への委任)
第八十四条
 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。



(検討)
第八十五条
 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において新社債等振替法、新証券取引法及び新金融先物取引法の施行状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、新社債等振替法第二条第十一項に規定する加入者保護信託、新証券取引法第二条第二十七項に規定する証券取引清算機関及び新金融先物取引法第二条第十三項に規定する金融先物清算機関に係る制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。


   附 則 (平成一四年七月三一日法律第九八号) 抄


(施行期日)
第一条
 この法律は、公社法の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一  第一章第一節(別表第一から別表第四までを含む。)並びに附則第二十八条第二項、第三十三条第二項及び第三項並びに第三十九条の規定 公布の日



(罰則に関する経過措置)
第三十八条
 施行日前にした行為並びにこの法律の規定によりなお従前の例によることとされる場合及びこの附則の規定によりなおその効力を有することとされる場合における施行日以後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。



(その他の経過措置の政令への委任)
第三十九条
 この法律に規定するもののほか、公社法及びこの法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。


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