自動車損害賠償保障法

          昭和三十年七月二十九日法律第九十七号
          〔法務・大蔵・運輸大臣署名〕

     第一章 総則
     第二章 自動車損害賠償責任
     第三章 自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済
           第一節 自動車損害賠償責任保険契約又は自動車損害賠償責任共済契約の締結強制
           第二節 自動車損害賠償責任保険契約及び自動車損害賠償責任共済契約
           第三節 自動車損害賠償責任保険事業及び自動車損害賠償責任共済事業
           第四節 自動車損害賠償責任保険審議会
           第五節 政府の自動車損害賠償責任再保険事業及び自動車損害賠償責任共済保険事業
     第四章 政府の自動車損害賠償保障事業
     第五章 雑則
     第六章 罰則
     附則

 

 

 

 


   第一章 総則

 

 


 (この法律の目的)
第一条 
  この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。



 (定義)
第二条 
  この法律で「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車(農耕作業の用に供することを目的として製作した小型特殊自動車を除く。)及び同条第三項に規定する原動機付自転車をいう。

2 この法律で「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう

3 この法律で「保有者」とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいう。

4 この法律で「運転者」とは、他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者をいう。





   第二章 自動車損害賠償責任



 (自動車損害賠償責任)
第三条 
  自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。



 (民法の適用)
第四条 
  自己のために自動車を運行の用に供する者の損害賠償の責任については、前条の規定によるほか、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による。





   第三章 自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済



    第一節 自動車損害賠償責任保険契約又は自動車損害賠償責任共済契約の締結強制



 (責任保険又は責任共済の契約の締結強制)
第五条 
  自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。



 (保険者及び共済責任を負う者)
第六条 
  責任保険の保険者(以下「保険会社」という。)は、保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等で、責任保険の引受けを行う者とする。

2 責任共済の共済責任を負う者は、次の各号に掲げる協同組合(以下「組合」という。)とする。
 一 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)に基づき責任共済の事業を行う農業協同組合又は農業協同組合連合会(以下「農業協同組合等」という。)
 二 消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)に基づき責任共済の事業を行う消費生活協同組合又は消費生活協同組合連合会(以下「消費生活協同組合等」という。)
 三 中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)に基づき責任共済の事業を行う事業協同組合又は協同組合連合会(以下「事業協同組合等」という。)



 (自動車損害賠償責任保険証明書)
第七条 
  保険会社は、保険料の支払があつたときは、保険契約者に対して、当該自動車につき自動車損害賠償責任保険証明書を交付しなければならない。

2 保険契約者は、当該自動車損害賠償責任保険証明書の記載事項について変更があつたときは、自動車損害賠償責任保険証明書にその変更についての記入を受けなければならない。

3 保険会社は、前項の規定による記入の申出があつたときは、遅滞なく、その記入を行わなければならない。ただし、第二十二条第三項又は第四項の規定による請求をした場合において、その金額の支払がなかつたときは、この限りでない。

4 保険契約者は、自動車損害賠償責任保険証明書が滅失し、損傷し、又はその識別が困難となつたときは、保険会社に対して、その再交付を求めることができる。

5 自動車損害賠償責任保険証明書の記載事項その他自動車損害賠償責任保険証明書に関する細目は、国土交通省令で定める。



 (自動車損害賠償責任保険証明書の備付)
第八条 
  自動車は、自動車損害賠償責任保険証明書(前条第二項の規定により変更についての記入を受けなければならないものにあつては、その記入を受けた自動車損害賠償責任保険証明書。次条において同じ。)を備え付けなければ、運行の用に供してはならない。



 (自動車損害賠償責任保険証明書の提示)
第九条 
  道路運送車両法第四条、第三十四条第一項、第三十六条の二第三項、第六十条第一項、第六十二条第二項(第六十三条第三項及び第六十七条第四項において準用する場合を含む。)、第六十七条第一項(使用者の変更に係る部分に限る。)、第七十一条第四項又は第九十七条の三に規定する処分を受けようとする者は、当該行政庁(同法第七十四条の三の規定の適用があるときは、軽自動車検査協会。次項において同じ。)に対して、自動車損害賠償責任保険証明書をも提示しなければならない。ただし、同法第九十四条の五第六項の規定により保安基準適合証の提出があつた場合において、同法第六十二条第二項に規定する処分を受けようとするときは、国土交通省令で定める方法により作成した自動車損害賠償責任保険証明書の写しの提出をもつて、自動車損害賠償責任保険証明書の提示に代えることができる。

2 当該行政庁は、自動車損害賠償責任保険証明書の提示又はその写しの提出がないときは、前項の処分をしないものとする。道路運送車両法第五十八条第一項に規定する検査対象外軽自動車以外の自動車について、その提示又は提出があつた自動車損害賠償責任保険証明書又はその写しに記載された保険期間が、当該自動車検査証に記入すべき有効期間又は臨時運行の許可の有効期間若しくは回送運行許可証の有効期間が満了する日までの期間の全部と重複するものでない場合においても、同様とする。

3 道路運送車両法第九十四条の五第一項の規定により保安基準適合証及び保安基準適合標章の交付を請求しようとする者は、同法第九十四条の三第一項の指定自動車整備事業者に対して、自動車損害賠償責任保険証明書を提示しなければならない。

4 指定自動車整備事業者は、前項の規定による提示がないとき、又はその提示があつた自動車損害賠償責任保険証明書に記載された保険期間が、その日から道路運送車両法第九十四条の五第六項の規定により保安基準適合証の提出があつた場合において記入されるべき同法第六十一条第一項に規定する自動車検査証の有効期間が満了する日までの期間の全部と重複するものでないときは、同法第九十四条の五第一項の規定にかかわらず、保安基準適合証及び保安基準適合標章を交付してはならない。



 (保険標章)
第九条の二 
  保険会社は、検査対象外軽自動車、原動機付自転車又は締約国登録自動車(道路交通に関する条約の実施に伴う道路運送車両法の特例等に関する法律(昭和三十九年法律第百九号)第二条第二項に規定する締約国登録自動車をいう。以下同じ。)について第七条第一項の規定により自動車損害賠償責任保険証明書を交付したときは、当該保険契約者に対して、保険標章を交付しなければならない。

2 保険標章には、国土交通省令で定めるところにより、保険期間の満了する時期を表示するものとする。

3 保険標章の有効期間は、保険期間と同一とする。

4 保険契約者は、保険標章が滅失し、損傷し、又はその識別が困難となつた場合その他国土交通省令で定める場合には、保険会社に対して、その再交付を求めることができる。

5 保険標章の様式その他保険標章に関する細目は、国土交通省令で定める。



第九条の三 
  検査対象外軽自動車、原動機付自転車及び締約国登録自動車は、国土交通省令で定めるところにより、保険標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない。

2 保険標章は、当該検査対象外軽自動車、当該原動機付自転車又は当該締約国登録自動車以外の検査対象外軽自動車、原動機付自転車又は締約国登録自動車に表示してはならない。

3 有効期間を経過した保険標章は、検査対象外軽自動車、原動機付自転車又は締約国登録自動車に表示してはならない。



 (自動車損害賠償責任共済証明書及び共済標章)
第九条の四 
  第七条及び第九条の二の規定は、責任共済について準用する。この場合において、これらの規定中「保険会社」とあるのは「組合」と、「保険料」とあるのは「共済掛金」と、「保険契約者」とあるのは「共済契約者」と、「自動車損害賠償責任保険証明書」とあるのは「自動車損害賠償責任共済証明書」と、「保険標章」とあるのは「共済標章」と、「保険期間」とあるのは「共済期間」と、第七条第三項中「第二十二条第三項又は第四項」とあるのは「第二十三条の二第一項において準用する第二十二条第三項又は第四項」と、第九条の二第一項中「第七条第一項」とあるのは「第九条の四において準用する第七条第一項」と読み替えるものとする。



第九条の五 
  責任共済の契約が締結されている自動車に係る第八条及び第九条の規定の適用については、これらの規定中「自動車損害賠償責任保険証明書」とあるのは「自動車損害賠償責任共済証明書」と、「保険期間」とあるのは「共済期間」と、第八条中「前条第二項」とあるのは「第九条の四において準用する第七条第二項」とする。

2 責任共済の契約が締結されている検査対象外軽自動車、原動機付自転車及び締約国登録自動車に係る第九条の三第一項の規定の適用については、同項中「保険標章」とあるのは、「共済標章」とする。

3 第九条の三第二項及び第三項の規定は、共済標章について準用する。



 (適用除外)
第十条 
  第五条及び第七条から前条までの規定は、国その他の政令で定める者が政令で定める業務又は用途のため運行の用に供する自動車及び道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による自動車道及びその他の一般交通の用に供する場所をいう。以下同じ。)以外の場所のみにおいて運行の用に供する自動車については、適用しない。



 (保険・共済除外標章)
第十条の二 
  国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより、前条の規定の適用を受ける検査対象外軽自動車及び原動機付自転車(政令で定めるもの及び道路以外の場所のみにおいて運行の用に供するものを除く。)について、保有者に対して保険・共済除外標章を交付しなければならない。

2 保険・共済除外標章の有効期間は、国土交通省令で定める。

3 第一項に規定する検査対象外軽自動車及び原動機付自転車は、国土交通省令で定めるところにより、保険・共済除外標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない。

4 第九条の二第四項及び第五項並びに第九条の三第二項及び第三項の規定は、保険・共済除外標章について準用する。





    第二節 自動車損害賠償責任保険契約及び自動車損害賠償責任共済契約



 (責任保険及び責任共済の契約)
第十一条 
  責任保険の契約は、第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。

2 責任共済の契約は、第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を組合がてん補することを約し、共済契約者が組合に共済掛金を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。



第十二条 
  責任保険の契約は、自動車一両ごとに締結しなければならない。



 (保険金額)
第十三条 
  責任保険の保険金額は、政令で定める。

2 前項の規定に基づき政令を制定し、又は改正する場合においては、政令で、当該政令の施行の際現に責任保険の契約が締結されている自動車についての責任保険の保険金額を当該制定又は改正による変更後の保険金額とするために必要な措置その他当該制定又は改正に伴う所要の経過措置を定めることができる。



 (免責)
第十四条 保険会社は、第八十二条の二に規定する場合を除き、保険契約者又は被保険者の悪意によつて生じた損害についてのみ、てん補の責を免かれる。



 (保険金の請求)
第十五条 
  被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。



 (保険会社に対する損害賠償額の請求)
第十六条 
  第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。

2 被保険者が被害者に損害の賠償をした場合において、保険会社が被保険者に対してその損害をてん補したときは、保険会社は、そのてん補した金額の限度において、被害者に対する前項の支払の義務を免かれる。

3 第一項の規定により保険会社が被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、保険契約者又は被保険者の悪意によつて損害が生じた場合を除き、保険会社が、責任保険の契約に基づき被保険者に対して損害をてん補したものとみなす。

4 保険会社は、保険契約者又は被保険者の悪意によつて損害が生じた場合において、第一項の規定により被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、その支払つた金額について、政府に対して補償を求めることができる。



 (休業による損害等に係る保険金等の限度)
第十六条の二 
  保険会社が被保険者に対して支払うべき保険金又は前条第一項の規定により被害者に対して支払うべき損害賠償額のうち被害者が療養のため労働することができないことによる損害その他の政令で定める損害に係る部分は、政令で定める額を限度とする。



 (被害者に対する仮渡金)
第十七条 
  保有者が、責任保険の契約に係る自動車の運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、政令で定める金額を第十六条第一項の規定による損害賠償額の支払のための仮渡金として支払うべきことを請求することができる。

2 保険会社は、前項の請求があつたときは、遅滞なく、請求に係る金額を支払わなければならない。

3 保険会社は、第一項の仮渡金の金額が支払うべき損害賠償額を超えた場合には、その超えた金額の返還を請求することができる。

4 保険会社は、保有者の損害賠償の責任が発生しなかつた場合において、第一項の仮渡金を支払つたときは、その支払つた金額について、政府に対して補償を求めることができる。



 (差押の禁止)
第十八条 
  第十六条第一項及び前条第一項の規定による請求権は、差し押えることができない。



 (時効)
第十九条 
  第十六条第一項及び第十七条第一項の規定による請求権は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。



 (追加保険料)
第十九条の二 
  自動車の運行によつて保有者及び運転者以外の者が死亡したときは、当該自動車に係る責任保険の保険契約者は、当該責任保険の契約の保険期間のうちその死亡があつた日以後の期間に応じ政令で定める額の保険料(以下「追加保険料」という。)を追加して支払う義務を負う。

2 保険会社は、前項の死亡があつたことを知つたときは、遅滞なく、保険契約者に対し同項の死亡があつた旨、追加保険料の額及びその支払期限を書面により通知しなければならない。この場合において、支払期限は、通知の書面を発する日から起算して国土交通省令で定める期間を経過した後としなければならない。

3 保険契約者は、支払期限までに追加保険料を支払わないときは、支払期限の翌日から追加保険料を支払う日までの日数に応じ延滞利息(その利率は、国土交通省令で定める。)を支払わなければならない。

4 保険会社は、第一項の死亡に関し当該責任保険の被保険者に対して保険金を支払うべき場合において、追加保険料及び延滞利息の支払を受けていないときは、追加保険料及び延滞利息に充てるため、これらの額に相当する金額をその保険金から控除することができる。

5 第一項の死亡について保有者に第三条の規定による損害賠償の責任が発生しなかつたときは、当該自動車に係る責任保険の保険契約者の追加保険料の支払義務は、初めから生じなかつたものとみなす。この場合において、保険会社が返還すべきこととなる追加保険料及び延滞利息の支払として受けた給付又は支払うべきこととなる前項の規定により控除した金額には、その給付を受け、又は控除した日からの日数に応じ利息(その利率は、国土交通省令で定める。)を附さなければならない。



 (告知すべき重要な事実等)
第二十条 
  商法(明治三十二年法律第四十八号)第六百四十四条に規定する重要な事実又は事項は、責任保険の契約にあつては、次のとおりとする。
 一 道路運送車両法の規定による自動車登録番号若しくは車両番号、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第四百四十六条第三項(同法第一条第二項において準用する場合を含む。)に規定する標識の番号又は道路交通に関する条約の規定による登録番号(これらが存しない場合にあつては、車台番号)
 二 政令で定める自動車の種別



 (責任保険の契約の解除等)
第二十条の二 
  責任保険の契約の当事者は、次に掲げる場合に限り、責任保険の契約を解除することができる。
 一 当該自動車が第十条に規定する自動車となつた場合
 二 商法第六百四十四条の規定による場合
 三 当該自動車について他に責任保険の契約又は責任共済の契約が締結されており、かつ、その契約の保険期間又は共済期間の終期が当該責任保険の契約の保険期間の終期と同一であるかその終期より遅いものである場合
 四 その他国土交通省令で定める場合

2 責任保険の契約の当事者は、その契約を合意により解除し、又はその契約に解除条件を附することができない。

3 第一項(第二号に係る部分を除く。)の規定による解除は、将来に向かつてのみその効力を生ずる。



 (告知義務違反による契約解除の効力)
第二十一条 
  商法第六百四十四条の規定により、保険会社が責任保険の契約を解除したときは、その解除は、保険契約者が解除の通知を受けた日から起算して七日の後に、将来に向つてその効力を生ずる。

2 前項の解除の効力が生ずる日前に危険が発生した場合には、商法第六百四十五条第二項の規定にかかわらず、保険会社は、損害をてん補する責に任ずる。この場合において保険会社が損害をてん補したときは、保険契約者に対し、そのてん補した金額の支払を請求することができる。



 (危険の増加又は減少による契約の変更)
第二十二条 
  保険期間中に危険が増加し、又は減少したときは、責任保険の契約は、新たな危険に対応する責任保険の契約に変更されたものとみなす。

2 保険契約者又は被保険者は、保険期間中に危険が増加したことを知つたときは、遅滞なく、これを保険会社に通知しなければならない。

3 保険期間中に危険が増加した後に危険が発生し、保険会社が損害をてん補した場合において、保険契約者又は被保険者が前項の通知を怠つていたときは、保険会社は、保険契約者に対し、そのてん補した金額の支払を請求することができる。

4 保険会社は、第一項の場合において、危険が増加したときは、保険契約者に対し、政令で定めるところにより増加する額の保険料の支払を請求することができる。

5 保険契約者は、第一項の場合において、危険が減少したときは、保険会社に対し、政令で定めるところにより減少する額の保険料の返還を請求することができる。



 (商法の適用)
第二十三条 
  責任保険の契約については、この法律に別段の定がある場合を除くほか、商法第三編第十章第一節第一款の規定による。



 (責任保険の契約に関する規定等の準用)
第二十三条の二 
  第十二条から第十九条の二まで及び第二十二条の規定は、責任共済の契約について準用する。この場合において、これらの規定中「責任保険の契約」とあるのは「責任共済の契約」と、「責任保険」とあるのは「責任共済」と、「保険金額」とあるのは「共済金額」と、「保険会社」とあるのは「組合」と、「保険契約者」とあるのは「共済契約者」と、「被保険者」とあるのは「被共済者」と、「保険金」とあるのは「共済金」と、「保険期間」とあるのは「共済期間」と、「保険料」とあるのは「共済掛金」と、「追加保険料」とあるのは「追加共済掛金」と、第十六条の二中「前条第一項」とあるのは「第二十三条の二第一項において準用する第十六条第一項」と、第十七条第一項中「第十六条第一項」とあるのは「第二十三条の二第一項において準用する第十六条第一項」と、第十八条中「第十六条第一項及び前条第一項」とあり、第十九条中「第十六条第一項及び第十七条第一項」とあるのは「第二十三条の二第一項において準用する第十六条第一項及び第十七条第一項」と読み替えるものとする。

2 商法第六百六十二条及び第六百六十三条の規定は、責任共済の契約について準用する。この場合において、同法第六百六十二条中「保険者」とあるのは「組合」と、「被保険者」とあるのは「被共済者」と、「保険契約者」とあるのは「共済契約者」と、同法第六百六十三条中「保険金額」とあるのは「共済金額」と、「保険料」とあるのは「共済掛金」と読み替えるものとする。



 (責任共済の契約の解除)
第二十三条の三 
  責任共済の契約の当事者は、次の各号に掲げる場合に限り、責任共済の契約を解除することができる。
 一 当該自動車が第十条に規定する自動車となつた場合
 二 責任共済の契約の当時共済契約者が組合に対し悪意又は重大な過失により第二十条各号に掲げる事項につき、その事項を告げず、又は不実のことを告げた場合
 三 当該自動車について他に責任保険の契約又は責任共済の契約が締結されており、かつ、その契約の保険期間又は共済期間の終期が当該責任共済の契約の共済期間の終期と同一であるかその終期より遅いものである場合
 四 その他国土交通省令で定める場合

2 第二十条の二第二項の規定は、責任共済の契約について準用する。

3 第二十条の二第三項の規定は、第一項(第二号に係る部分を除く。)の規定による解除について準用する。

4 商法第六百四十四条第一項ただし書及び第二項の規定並びに第二十一条の規定は、第一項第二号の規定による解除について準用する。この場合において、これらの商法の規定中「保険者」とあるのは「組合」と、第二十一条中「保険契約者」とあるのは「共済契約者」と、同条第二項中「保険会社」とあるのは「組合」と読み替えるものとする。





    第三節 自動車損害賠償責任保険事業及び自動車損害賠償責任共済事業



 (責任保険及び責任共済の契約の締結義務)
第二十四条 
  保険会社は、政令で定める正当な理由がある場合を除き、責任保険の契約の締結を拒絶してはならない。

2 組合は、次の各号に掲げる場合及び政令で定める正当な理由がある場合を除き、責任共済の契約の締結を拒絶してはならない。
 一 農業協同組合法第十条第二十項ただし書の規定に違反することとなる場合
 二 消費生活協同組合法第十二条第三項の規定に違反することとなる場合
 三 中小企業等協同組合法第九条の二第三項ただし書(同法第九条の九第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反することとなる場合



 (保険料率及び共済掛金率の基準)
第二十五条 
  責任保険の保険料率及び責任共済の共済掛金率は、能率的な経営の下における適正な原価を償う範囲内でできる限り低いものでなければならない。



 (保険料率の審査等)
第二十六条 
  内閣総理大臣は、保険業法第三条第一項又は第百八十五条第一項の免許の申請があつた場合において、同法第五条第一項第四号(同法第百八十七条第五項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)に掲げる基準に適合するかどうかの審査を行うときは、責任保険については、同法第五条第一項第四号に掲げる基準のほか、前条の規定に適合するかどうかを審査しなければならない。

2 保険業法第百二十三条第一項(同法第二百七条において準用する場合を含む。)の内閣府令で定める事項には、責任保険に係る事項は、含まれないものとする。

3 内閣総理大臣は、保険業法第百二十三条第一項(同法第二百七条において準用する場合を含む。)の認可の申請があつた場合において、同法第百二十四条(同法第二百七条において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の審査を行うときは、責任保険の保険料率に係る事項については、同法第百二十四条第二号に定める基準のほか、前条の規定に適合するかどうかを審査しなければならない。



第二十六条の二 
  責任保険については、損害保険料率算出団体に関する法律(昭和二十三年法律第百九十三号)第十条の二、第十条の三、第十条の四第二項及び第三項後段、第十条の五第四項並びに第十条の六第一項から第四項までの規定は、適用しない。

2 責任保険についての損害保険料率算出団体に関する法律第十条の四第一項及び第三項前段の規定の適用については、同条第一項中「基準料率を中心とした一定の範囲内の保険料率(以下この条において「範囲料率」という。)」とあるのは「基準料率」と、同条第三項前段中「範囲料率」とあるのは「基準料率」と、「認可を受け、又は同条第二項の規定による届出を行つた」とあるのは「認可を受けた」とする。

3 責任保険についての損害保険料率算出団体に関する法律第十条の五第一項から第三項までの規定の適用については、同条第一項中「第十条の二第一項及び第二項に規定する期間が経過し、かつ、当該基準料率が第八条の規定に適合していると認めるとき」とあるのは「当該基準料率が第八条及び自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)第二十五条の規定に適合していると認めるとき」と、同条第二項中「第十条の三第一項又は第二項の規定による意見聴取及び適合性審査」とあるのは「第八条及び自動車損害賠償保障法第二十五条の規定に適合するかどうかについての審査」と、同条第三項中「基準料率が第八条の規定に適合しないと認めるとき」とあるのは「基準料率が第八条又は自動車損害賠償保障法第二十五条の規定に適合しないと認めるとき」とする。



第二十六条の三 
  内閣総理大臣は、責任保険の保険料が能率的な経営の下における適正な原価を超えると認めるときは、保険会社又は損害保険料率算出団体に関する法律第二条第一項第三号に規定する損害保険料率算出団体に対して、責任保険の保険料率又は同項第六号に掲げる基準料率(第二十八条及び第二十九条の二において「基準料率」という。)の変更を命ずることができる。



 (農業協同組合等の行う責任共済の事業に係る共済規程の審査等)
第二十七条 
  行政庁(農業協同組合法第九十八条第一項に規定する行政庁をいい、同条第十一項の規定により農林水産大臣の権限に属する事務を行うこととされた都道府県知事を含むものとする。)は、責任共済の事業(責任共済の契約によつて負う共済責任の再共済(以下「再共済」という。)の事業又は再共済の契約によつて負う再共済責任の再再共済(以下「再再共済」という。)の事業を含む。以下同じ。)を行おうとする農業協同組合等に対し、同法第十一条の四第一項の規定により責任共済の事業についての共済規程の承認を行おうとする場合には、当該農業協同組合等が第一号及び第二号に掲げる基準に適合するかどうか並びに当該共済規程に記載された事項のうち事業の実施方法、共済契約又は共済掛金に係るものが第三号に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。
 一 当該農業協同組合等が責任共済の事業を健全かつ効率的に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、責任共済の事業に係る収支の見込みが良好であること。
 二 当該農業協同組合等が、その人的構成等に照らして、責任共済の事業を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を 有する者であること。
 三 共済規程に記載された事項が次に掲げる基準に適合するものであること。
  イ 共済契約の内容が、共済契約者、被共済者、共済金額を受け取るべき者その他の関係者(以下この号において
    「共済契約者等」という。)の保護に欠けるおそれないものであること。
  ロ 共済契約の内容に関し、特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと。
  ハ 共済契約の内容が、公の秩序又は善良の風俗を害する行為を助長し、又は誘発するおそれのないものであること。
  ニ 共済契約者等の権利義務その他共済契約の内容が、共済契約者等にとつて明確かつ平易に定められたもので
     あること。
  ホ 共済掛金が、第二十五条の規定に適合しているほか、合理的かつ妥当なものであり、また特定の者に対して不当な
     差別的取扱いをするものでないこと。
  ヘ その他農林水産省令で定める基準

2 前項に規定する行政庁は、責任共済の事業を行う農業協同組合等に対し農業協同組合法第十一条の四第三項の規定により責任共済の事業についての共済規程の変更の承認を行おうとする場合には、共済規程に記載された事項のうち事業の実施方法、共済契約又は共済掛金に係るものが前項第三号に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。

3 第一項に規定する行政庁は、責任共済の共済掛金が能率的な経営の下における適正な原価を超えると認めるときは、農業協同組合等に対して、責任共済の共済掛金率の変更を命ずることができる。



 (消費生活協同組合等及び事業協同組合等の行う責任共済の事業に係る共済事業規約の審査等)
第二十七条の二 
  前条の規定は、消費生活協同組合等が責任共済の事業を行う場合について準用する。この場合において、同条中「行政庁(農業協同組合法第九十八条第一項に規定する行政庁をいい、同条第十一項の規定により農林水産大臣の権限に属する事務を行うこととされた都道府県知事を含むものとする。)」とあるのは「行政庁(消費生活協同組合法第九十七条に規定する当該行政庁をいい、同法第九十七条の二の規定により厚生労働大臣の権限に属する事務を行うこととされた都道府県知事を含むものとする。)」と、「農業協同組合等」とあるのは「消費生活協同組合等」と、「同法第十一条の四第一項の規定により責任共済の事業についての共済規程の承認」とあるのは「同法第四十三条第四項の規定により責任共済の事業についての規約(以下「共済事業規約」という。)の設定の認可」と、「共済規程」とあるのは「共済事業規約」と、「農林水産省令」とあるのは「厚生労働省令」と、「農業協同組合法第十一条の四第三項の規定により責任共済の事業についての共済規程の変更の承認」とあるのは「消費生活協同組合法第四十三条第四項の規定により責任共済の事業についての共済事業規約の変更の認可
 」と読み替えるものとする。

2 前条の規定は、事業協同組合等が責任共済の事業を行う場合について準用する。この場合において、同条中「行政庁(農業協同組合法第九十八条第一項に規定する行政庁をいい、同条第十一項の規定により農林水産大臣の権限に属する事務を行うこととされた都道府県知事を含むものとする。)」とあるのは「行政庁(中小企業等協同組合法第百十一条第一項に規定する行政庁をいい、同条第三項の規定により主務大臣の権限に属する事務を行うこととされた都道府県知事及び同条第四項の規定により主務大臣の権限の一部を委任された地方支分部局の長を含むものとする。)」と、「農業協同組合等」とあるのは「事業協同組合等」と、「同法第十一条の四第一項の規定により責任共済の事業についての共済規程の承認」とあるのは「同法第九条の六の二第一項(同法第九条の九第四項において準用する場合を含む。)の規定により責任共済の事業についての共済
 規程の認可」と、「農林水産省令」とあるのは「当該事業協同組合等の定款において組合員の資格として定められる事業の所管大臣(以下「事業所管大臣」という。)が定める省令」と、「農業協同組合法第十一条の四第三項の規定により責任共済の事業についての共済規程の変更の承認」とあるのは「中小企業等協同組合法第九条の六の二第三項(同法第九条の九第四項において準用する場合を含む。)の規定により責任共済の事業についての共済規程の変更の認可」と読み替えるものとする。


 (同意)
第二十八条 
  内閣総理大臣は、保険業法第三条第一項又は第百八十五条第一項の免許の申請があつた場合(責任保険について、同法第五条第一項第三号及び第四号(これらの規定を同法第百八十七条第五項において準用する場合を含む。)に掲げる基準並びに第二十五条の規定に適合するかどうかについて審査する必要がある場合に限る。)において、当該免許をしようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣の同意を得るものとする。

2 内閣総理大臣は、保険業法第四条第二項第三号若しくは第四号又は第百八十七条第三項第三号若しくは第四号に掲げる書類に定めた事項のうち責任保険に関する部分について、同法第百二十三条第一項(同法第二百七条において準用する場合を含む。)の規定による認可又は同法第百三十一条若しくは第二百三条の規定による命令をしようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣の同意を得るものとする。

3 内閣総理大臣は、責任保険の基準料率について、損害保険料率算出団体に関する法律第九条の三第一項の規定による届出があつた場合において、第二十六条の二第三項の規定により読み替えて適用する同法第十条の五第一項の規定により同法第十条の四第一項に規定する九十日を経過する日までの期間を相当と認める期間に短縮しようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣の同意を得るものとする。同法第十条の五第三項の規定による命令をしないこととするときについても、同様とする。

4 内閣総理大臣は、責任保険の保険料率又は基準料率に関し、第二十六条の三の規定による変更命令又は損害保険料率算出団体に関する法律第十条の六第五項の規定による命令をしようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣の同意を得るものとする。

5 内閣総理大臣は、保険会社がこの法律若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分に違反し、又は責任保険の保険約款若しくは保険料率について保険業法若しくは損害保険料率算出団体に関する法律若しくはこれらに基づく命令若しくはこれらに基づく処分に違反した場合において、保険業法第百三十三条又は第二百五条の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣の同意を得るものとする。



 (同意及び協議)
第二十八条の二 
  第二十七条第一項に規定する行政庁は、責任共済の事業についての共済規程のうち事業の実施方法、共済契約又は共済掛金に係るものに関し、次の各号に掲げる処分をしようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣及び内閣総理大臣の同意を得るものとする。
 一 第二十七条第三項の規定による変更命令
 二 農業協同組合法第十一条の四第一項又は第三項の規定による承認
 三 農業協同組合法第九十四条の二第二項若しくは第三項又は第九十五条の規定による処分

2 前項に規定する行政庁は、責任共済の事業についての共済規程のうち事業の実施方法、共済契約又は共済掛金に係るものに関し、農業協同組合法第十一条の四第二項の農林水産省令を制定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣及び内閣総理大臣に協議するものとする。

3 第二十七条の二第一項において読み替えて準用する第二十七条第一項に規定する行政庁は、責任共済の事業についての共済事業規約のうち事業の実施方法、共済契約又は共済掛金に係るものに関し、次の各号に掲げる処分をしようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣及び内閣総理大臣の同意を得るものとする。
 一 第二十七条の二第一項において読み替えて準用する第二十七条第三項の規定による変更命令
 二 消費生活協同組合法第四十三条第四項の規定による認可
 三 消費生活協同組合法第九十四条の二、第九十五条第一項若しくは第二項又は第九十五条の二の規定による処分

4 前項に規定する行政庁は、責任共済の事業についての共済事業規約のうち事業の実施方法、共済契約又は共済掛金に係るものに関し、消費生活協同組合法第二十六条の三第二項の規定により読み替えて適用される同条第一項の厚生労働省令を制定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣及び内閣総理大臣に協議するものとする。

5 第二十七条の二第二項において読み替えて準用する第二十七条第一項に規定する行政庁は、責任共済の事業についての共済規程のうち事業の実施方法、共済契約又は共済掛金に係るものに関し、次の各号に掲げる処分をしようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣及び内閣総理大臣の同意を得るものとする。
 一 第二十七条の二第二項において読み替えて準用する第二十七条第三項の規定による変更命令
 二 中小企業等協同組合法第九条の六の二第一項又は第三項(同法第九条の九第四項において準用する場合を含む。)の規定による認可
 三 中小企業等協同組合法第百五条の五又は第百六条第一項から第三項までの規定による処分

6 前項に規定する行政庁は、責任共済の事業についての共済規程のうち事業の実施方法、共済契約又は共済掛金に係るものに関し、中小企業等協同組合法第九条の六の二第二項(同法第九条の九第四項において準用する場合を含む。)の省令を制定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣及び内閣総理大臣に協議するものとする。



 (準備金)
第二十八条の三 
  保険会社は、保険業法第百十六条の規定にかかわらず、責任保険の事業から生じた収支差額及び運用益については、その全額を主務省令で定める準備金として積み立てるものとする。この場合において、積み立てた準備金は、責任保険の事業の収支の不足のてん補に充てる場合その他主務省令で定める場合を除き、取り崩してはならない。

2 前項の規定は、農業協同組合等に準用する。この場合において、同項中「保険会社」とあるのは「農業協同組合等」と、「保険業法第百十六条の規定にかかわらず」とあるのは「農業協同組合法第十一条の五の規定にかかわらず」と、「責任保険の事業」とあるのは「責任共済の事業」と読み替えるものとする。

3 第一項の規定は、消費生活協同組合等に準用する。この場合において、同項中「保険会社」とあるのは「消費生活協同組合等」と、「保険業法第百十六条の規定にかかわらず」とあるのは「消費生活協同組合法第五十条の五の規定にかかわらず」と、「責任保険の事業」とあるのは「責任共済の事業」と読み替えるものとする。

4 第一項の規定は、事業協同組合等に準用する。この場合において、同項中「保険会社」とあるのは「事業協同組合等」と、「保険業法第百十六条の規定にかかわらず、責任保険の事業」とあり、「責任保険の事業」とあるのは「責任共済の事業」と読み替えるものとする。

5 第一項(前三項において準用する場合を含む。)の主務省令は、内閣総理大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、国土交通大臣及び事業所管大臣が共同で発する命令とする。



 (共同プール事務)
第二十八条の四 
  保険会社及び組合(責任共済の契約の締結により負う共済責任の全部を他の組合に再共済する契約を締結した組合及び当該再共済の契約の締結により負う再共済責任の全部を他の組合に再再共済する契約を締結した組合を除く。以下この条において同じ。)は、次の各号に掲げる方法により、相互間で共同して、保険料、保険金等の計算、配分及び徴収をする事務(以下この条において「共同プール事務」という。)を行うものとする。

1 責任保険の保険料その他この法律の規定により保険会社が収受したもの又は責任共済の共済掛金、再共済の再共済掛金若しくは再再共済の再再共済掛金その他この法律の規定により組合が収受したものから、第四十条及び第七十八条その他この法律の規定により政府に納付したもの並びに保険会社の責任保険の事業を行うための費用(保険料から将来の保険金の支払に充てられると見込まれるもの及び同条の規定により政府に納付すべきものとされるものを控除した残額をいう。)又は組合の責任共済の事業を行うための費用(共済掛金、再共済掛金又は再再共済掛金から将来の共済金、再共済金又は再再共済金の支払に充てられると見込まれるもの及び同条の規定により政府に納付すべきものとされるものを控除した残額をいう。)を控除した残額を、次項の規約において保険会社及び組合別に定める割合(以下この条において「配分率」という。)に応じて保険会社及び組合に対して配分すること。

2 保険金その他この法律の規定により若しくは責任保険の契約に定めるところにより保険会社が支払つたもの又は共済金、再共済金若しくは再再共済金その他この法律の規定により若しくは責任共済、再共済若しくは再再共済の契約に定めるところにより組合が支払つたものから、第四十条その他この法律の規定により政府から収受したものを控除した残額を配分率に応じて保険会社及び組合から徴収すること。保険会社及び組合は、配分率その他共同プール事務に関し必要な事項を定める規約を作成し、保険会社にあつては国土交通大臣及び内閣総理大臣に、組合にあつては国土交通大臣及び当該組合を所管する厚生労働大臣、農林水産大臣又は事業所管大臣に届け出なければならない。当該規約の変更をしたときも、同様とする。

3 国土交通大臣は、共同プール事務の運営状況を把握するため、その必要の限度において、保険会社又は組合に対し、当該共同プール事務に関し必要な報告又は資料の提出を求めることができる。この場合において、国土交通大臣は、あらかじめ、当該保険会社又は組合を所管する内閣総理大臣又は厚生労働大臣、農林水産大臣若しくは事業所管大臣に協議するものとする。

4 国土交通大臣並びに内閣総理大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣及び事業所管大臣は、第二項の規定により届出を受けた規約の内容が法令に違反し、若しくは特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものであると認めるとき、又は共同プール事務が適正に行われていないと認めるときは、保険会社又は組合に対し、共同して、規約の変更その他必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。



 (共同行為に関する通知)
第二十九条 
  内閣総理大臣は、保険業法第百一条第一項第一号(同法第百九十九条において準用する場合を含む。)に掲げる責任保険の事業に関する共同行為に関して、同法第百二条第一項(同法第百九十九条において準用する場合を含む。)の規定による認可をしたときは、その旨を国土交通大臣に通知するものとする。



 (損害率等の報告義務)
第二十九条の二 
  保険会社及び組合は、内閣府令で定めるところにより、損害保険料率算出団体であつて責任保険の基準料率の算出を行うもののうち内閣総理大臣の指定するもの(次項において「料率団体」という。)に対して、損害率その他責任保険の保険料率又は責任共済の共済掛金率の算出に関し必要な事項を報告しなければならない。

2 組合は、料率団体に対し、責任保険の基準料率の算出の基礎となつた資料の提供を求めることができる。

3 内閣総理大臣は、第一項の内閣府令を制定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣並びに厚生労働大臣、農林水産大臣及び事業所管大臣に協議するものとする。



 (代理店契約)
第三十条 
  保険会社は、自動車運送の振興を図ることを目的として組織する団体その他の者であつて、責任保険の事業の円滑な遂行上適当と認められるものと責任保険に関する代理店契約を締結するものとする。





    第四節 自動車損害賠償責任保険審議会



 (設置)
第三十一条 
  金融庁に、自動車損害賠償責任保険審議会(以下「審議会」という。)を置く。



第三十二条 削除



 (諮問等)
第三十三条 
  内閣総理大臣は、第二十八条第一項に規定する場合において同項に規定する処分をしようとするとき、又は同条第二項若しくは第四項に規定する処分をしようとするときは、審議会に諮らなければならない。同条第三項に規定する場合において、同項前段に規定する期間を短縮しようとするとき、又は同項後段に規定する命令をしないこととするときについても、同様とする。

2 内閣総理大臣は、第二十八条の二第一項、第三項又は第五項の規定による同意をしようとするときは、審議会に諮らなければならない。

3 審議会は、前項の規定による諮問に応じて、第二十八条の二第一項、第三項又は第五項の規定による内閣総理大臣の同意に関し調査審議する。



第三十四条 削除



 (委員)
第三十五条 
  審議会の委員は、政令で定めるところにより、内閣総理大臣が国土交通大臣の同意を得て、任命する。



第三十六条から第三十八条まで 削除



 (政令への委任)
第三十九条 
  第三十一条、第三十三条及び第三十五条に規定するもののほか、審議会の織及び委員その他の職員その他審議会に関し必要な事項は、政令で定める。





    第五節 政府の自動車損害賠償責任再保険事業及び自動車損害賠償責任共済保険事業



 (再保険及び保険)
第四十条 
  政府は、保険会社が責任保険(原動機付自転車に係るものを除く。以下この節において同じ。)の事業によつて負う保険責任を再保険するものとする。

2 政府は、組合が責任共済(原動機付自転車に係るものを除く。第五十条において同じ。)の契約によつて負う共済責任(当該共済責任の全部について再共済の契約が締結されている場合にあつては、当該再共済責任(当該再共済責任の全部について再再共済の契約が締結されている場合にあつては、当該再再共済責任))を保険するものとする。



 (再保険関係の成立)
第四十一条 
  政府と保険会社との間の再保険関係は、保険会社と保険契約者との間の責任保険関係の成立により、その成立の時において成立する。



 (再保険金額)
第四十二条 
  再保険金額は、責任保険の保険金額の百分の六十とする。



 (再保険料率)
第四十三条 
  再保険料率は、責任保険の保険料率に政令で定める割合を乗じたものとする。



 (追加保険料に係る再保険料の支払)
第四十三条の二 
  追加保険料に係る再保険料は、保険会社が追加保険料の支払を受けた日から起算して国土交通省令で定める期間を経過する日までに政府に支払わなければならない。



 (政府の支払うべき再保険金の金額)
第四十四条 
  政府が支払うべき再保険金の金額は、保険会社が支払うべき保険金の金額の百分の六十とする。



 (再保険料の払いもどし等)
第四十五条 
  政府は、保険会社が、保険約款で定めるところにより保険料の払いもどしをしたときは、政令で定めるところにより、保険会社に対して再保険料の一部を払いもどすことができる。

2 政府は、保険会社が、第十九条の二第五項前段に規定する事由により、利息を附して、追加保険料及び延滞利息の支払として受けた給付を返還し、又は同条第四項の規定により控除した金額を支払つたときは、保険会社に対して追加保険料に係る再保険料の支払として受けた給付及び次条第二項の規定により納付を受けた金額に保険会社が支払つた利息の百分の六十に相当する金額を附して返還するものとする。



 (保険代位等の場合の納付)
第四十六条 
  保険会社は、責任保険に関して代位により取得した権利を行使したときは、その行使によつて得た金額の百分の六十を政府に納付しなければならない。

2 保険会社は、第十九条の二第三項の規定により延滞利息の支払を受けたときは、支払を受けた金額の百分の六十を政府に納付しなければならない。

3 保険会社は、第二十一条第二項後段又は第二十二条第三項の規定による支払を受けたときは、支払を受けた金額の百分の六十を政府に納付しなければならない。



 (通知)
第四十七条 
  保険会社は、保険契約者との間に責任保険関係が成立したときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、当該責任保険関係に関する事項を国土交通大臣に通知しなければならない。通知した事項に変更を生じたときも、同様とする。
2 保険会社は、責任保険に関し損害をてん補すべき原因が発生したと認めるときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を国土交通大臣に通知しなければならない。



 (免責)
第四十八条 
  次の場合には、政府は、再保険金の全部又は一部につき、支払の責を免かれる。
 一 保険会社が、法令又は保険約款に違反して損害をてん補したとき。
 二 保険会社が、てん補額を不当に認定して損害をてん補したとき。
 三 保険会社が、故意若しくは重大な過失により前条の規定による通知を怠り、又は虚偽の通知をしたとき。



 (時効)
第四十九条 
   再保険金の支払の義務及び再保険料の払いもどしの義務は二年、再保険料の支払の義務は一年を経過したときは、時効によつて消滅する。



 (再保険に関する規定の準用)
第五十条 
  第四十一条から前条までの規定は、自動車損害賠償責任共済保険事業(第四十条第二項の規定による保険に関する事業をいう。以下同じ。)について準用する。この場合において、これらの規定中「保険会社」とあるのは「組合」と、「再保険関係」とあるのは「保険関係」と、「保険契約者」とあるのは「共済契約者」と、「責任保険関係」とあるのは「責任共済関係」と、「再保険金額」とあるのは「保険金額」と、「保険金額」とあるのは「共済金額、再共済金額又は再再共済金額」と、「再保険料率」とあるのは「保険料率」と、「保険料率」とあるのは「共済掛金率、再共済掛金率又は再再共済掛金率」と、「再保険料」とあるのは「保険料」と、「再保険金」とあるのは「保険金」と、「保険金」とあるのは「共済金、再共済金又は再再共済金」と、「保険料」とあるのは「共済掛金、再共済掛金又は再再共済掛金」と、第四十二条、第四十三条及び第四十七条第二項中「責任保険」とあるのは「責任共済、再共済又は再再共済」と、第四十三条の二中「追加保険料」とあるのは「追加共済掛金」と、第四十五条第一項中「保険約款」とあるのは「共済規程(共済契約に係る部分に限る。)又は共済事業規約(共済契約に係る部分に限る。)」と、同条第二項中「第十九条の二第五項前段」とあるのは「第二十三条の二第一項において準用する第十九条の二第五項前段」と、「追加保険料」とあるのは「追加共済掛金、追加再共済掛金又は追加再再共済掛金」と、「同条第四項」とあるのは「第二十三条の二第一項において準用する第十九条の二第四項」と、「次条第二項」とあるのは「第五十条第一項において準用する第四十六条第二項」と、第四十六条第一項中「責任保険」とあるのは「責任共済」と、同条第二項中「第十九条の二第三項」とあるのは「第二十三条の二第一項において準用する第十九条の二第三項」と、同条第三項中「第二十一条第二項後段又は第二十二条第三項」とあるのは「第二十三条の三第四項において準用する第二十一条第二項後段又は第二十三条の二第一項において準用する第二十二条第三項」と、第四十八条第一号中「保険約款」とあるのは「共済規程(共済契約に係る部分に限る。)若しくは共済事業規約(共済契約に係る部分に限る。)」と、同条第三号中「前条」とあるのは「第五十条第一項において準 用する第四十七条」と読み替えるものとする。

2 前項において準用する第四十一条及び第四十七条第一項の規定は、組合が再共済責任又は再再共済責任を負う場合において、当該再共済責任又は再再共済責任に係る共済責任を負う組合と共済契約者との間に責任共済関係が成立したときについても、適用があるものとする。

3 第一項において準用する第四十三条の二の規定は、組合が再共済責任又は再再共済責任を負う場合において、当該再共済責任又は再再共済責任に係る共済責任を負う組合が追加共済掛金の支払を受けたときについても、適用があるものとする。

4 第一項において準用する第四十六条の規定は、組合が再共済責任又は再再共済責任を負う場合において、当該再共済責任又は再再共済責任に係る共済責任を負う組合が当該責任共済に関し権利を行使し、又は支払を受けたときについても、適用があるものとする。



 (再保険事業及び保険事業に関する経費の繰入)
第五十一条 
  政府は、自動車損害賠償責任再保険事業(第四十条第一項の規定による再保険に関する事業をいう。以下同じ。)及び自動車損害賠償責任共済保険事業の業務の執行に要する経費に相当する金額を、毎会計年度、予算で定めるところにより、一般会計から自動車損害賠償責任再保険特別会計に繰り入れるものとする。



第五十二条から第七十条まで 削除





   第四章 政府の自動車損害賠償保障事業



 (自動車損害賠償保障事業)
第七十一条 
  政府は、この法律の規定により、自動車損害賠償保障事業を行う。



 (業務)
第七十二条 
  政府は、自動車の運行によつて生命又は身体を害された者がある場合において、その自動車の保有者が明らかでないため被害者が第三条の規定による損害賠償の請求をすることができないときは、被害者の請求により、政令で定める金額の限度において、その受けた損害をてん補する。責任保険の被保険者及び責任共済の被共済者以外の者が、第三条の規定によつて損害賠償の責に任ずる場合(その責任が第十条に規定する自動車の運行によつて生ずる場合を除く。)も、被害者の請求により、政令で定める金額の限度において、その受けた損害をてん補する。

2 政府は、第十六条第四項又は第十七条第四項(これらの規定を第二十三条の二第一項において準用する場合を含む。)の規定による請求により、これらの規定による補償を行う。

3 前二項の請求の手続は、国土交通省令で定める。



 (他の法令による給付との調整等)
第七十三条 
  被害者が、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)その他政令で定める法令に基づいて前条第一項の規定による損害のてん補に相当する給付を受けるべき場合には、政府は、その給付に相当する金額の限度において、同項の規定による損害のてん補をしない。

2 前条第一項後段の場合において、被害者が第三条の規定による損害賠償の責に任ずる者から損害の賠償を受けたときは、政府は、その金額の限度において、前条第一項後段の規定による損害のてん補をしない。



 (差押の禁止)
第七十四条 
  第七十二条第一項の規定による請求権は、差し押えることができない。



 (時効)
第七十五条 
  第十六条第四項若しくは第十七条第四項(これらの規定を第二十三条の二第一項において準用する場合を含む。)又は第七十二条第一項の規定による請求権は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。



 (代位等)
第七十六条 
  政府は、第七十二条第一項の規定による損害のてん補をしたときは、その支払金額の限度において、被害者が損害賠償の責任を有する者に対して有する権利を取得する。

2 政府は、保険契約者若しくは被保険者又は共済契約者若しくは被共済者の悪意によつて損害が生じた場合において、保険会社又は組合が第十六条第一項(第二十三条の二第一項において準用する場合を含む。)の規定により被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、その支払金額の限度において、被害者が保険契約者若しくは被保険者又は共済契約者若しくは被共済者に対して有する権利を取得する。

3 政府は、保有者の損害賠償の責任が発生しなかつた場合において、保険会社又は組合が第十七条第一項(第二十三条の二第一項において準用する場合を含む。)の規定により被害者に対して仮渡金の支払をしたときは、被害者に対してその返還を請求することができる。



 (業務の委託)
第七十七条 
  政府は、政令で定めるところにより、第七十二条第一項の規定による業務の一部を保険会社又は組合に委託することができる。

2 組合は、次の各号に掲げる規定にかかわらず、前項の規定により委託された業務を行うことができる。
 一 農業協同組合法第十条
 二 消費生活協同組合法第十条
 三 中小企業等協同組合法第九条の二又は第九条の九

3 国土交通大臣は、第一項の規定による委託をしたときは、委託を受けた保険会社又は組合の名称その他国土交通省令で定める事項を告示しなければならない。



 (自動車損害賠償保障事業賦課金)
第七十八条 
  保険会社、組合及び第十条に規定する自動車のうち政令で定めるものを運行の用に供する者は、国土交通省令で定めるところにより、政令で定める金額を、自動車損害賠償保障事業賦課金として政府に納付しなければならない。



 (過怠金)
第七十九条 
  政府は、第七十二条第一項後段の規定による損害のてん補をしたときは、損害賠償の責に任ずる者に対して、政令で定める金額を過怠金として徴収することができる。



 (徴収金の滞納処分)
第八十条 
  第七十八条の自動車損害賠償保障事業賦課金又は前条の過怠金を納付しない者があるときは、国土交通大臣は、期限を定めて督促をする。

2 国土交通大臣は、前項の規定による督促をするときは、納付義務者に対して督促状を発する。この場合において、督促状により定めるべき期限は、これを発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。

3 第一項の規定による督促は、民法第百五十三条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。

4 国土交通大臣は、第一項の規定による督促を受けた者が、同項の期限までに自動車損 害賠償保障事業賦課金又は過怠金を納付しないときは、国税滞納処分の例によつて、これを処分する。



 (先取特権の順位)
第八十一条 
  第七十八条の自動車損害賠償保障事業賦課金及び第七十九条の過怠金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐ。



 (自動車損害賠償保障事業に関する費用の繰入)
第八十二条 
  政府は、第十条に規定する自動車(第七十八条の政令で定めるもの及び道路以外の場所のみにおいて運行の用に供するものを除く。)について、第七十八条の自動車損害賠償保障事業賦課金に相当する金額を、毎会計年度、予算で定めるところにより、国の他の会計から自動車損害賠償責任再保険特別会計に繰り入れるものとする。

2 政府は、この法律に規定する自動車損害賠償保障事業の業務の執行に要する経費の一部を、毎会計年度、予算で定めるところにより、一般会計から自動車損害賠償責任再保険特別会計に繰り入れるものとする。





   第五章 雑則



 (重複契約の場合の免責)
第八十二条の二 
  一両の自動車について二以上の責任保険の契約又は責任共済の契約が締結されている場合においては、保険会社又は組合は、これらの契約のうち締結した時が最も早い契約以外の契約については、その締結した時が最も早い契約の保険期間又は共済期間と重複する保険期間又は共済期間において発生した自動車の運行による事故に係る損害のてん補、第十六条第一項(第二十三条の二第一項において準用する場合を含む。)の規定による損害賠償額の支払及び第十七条第一項(第二十三条の二第一項において準用する場合を含む。)の規定による仮渡金の支払(次項において「損害のてん補等」という。)の責めを免れる。

2 前項の場合において、同項の締結した時が最も早い契約が二以上あるときは、保険会社又は組合は、これらの契約のうち一の契約については、当該契約に関し損害のてん補等をすべき金額をこれらの契約の数で除して得た金額を超える金額について、損害のてん補等の責めを免れる。

3 保険会社又は組合は、第一項の締結した時が最も早い契約以外の契約に関して第十六条第一項(第二十三条の二第一項において準用する場合を含む。)の規定による損害賠償額の支払又は第十七条第一項(第二十三条の二第一項において準用する場合を含む。)の規定による仮渡金の支払(以下この項及び次項において「損害賠償額等の支払」という。)の請求があつた場合において、損害賠償額等の支払として給付をしたときは、保険会社若しくは組合又は被害者が当該請求に係る契約が第一項の締結した時が最も早い契約以外の契約であることを知つていた場合を除き、その給付をした額の限度において、被害者が損害賠償の責任を有する者に対して有する権利を取得するとともに、被害者に対してした給付の返還を請求する権利を失う。

4 前項の規定は、保険会社又は組合が第一項の締結した時が最も早い契約に関し第二項の規定により損害賠償額等の支払について責めを免れるべき金額の支払をした場合について準用する。この場合において、前項中「契約が第一項の締結した時が最も早い契約以外の契約であること」とあるのは「契約の他に第一項の締結した時が最も早い契約があること」と、「その給付をした額」とあるのは「第二項の規定により損害賠償額等の支払について責めを免れるべき金額」と読み替えるものとする。



 (業務の管掌)
第八十三条 
  政府の自動車損害賠償責任再保険事業、自動車損害賠償責任共済保険事業及び自動車損害賠償保障事業の業務は、国土交通大臣が管掌する。



 (権限の委任)
第八十四条 
  内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。

2 第十条の二、前章及び第八十五条の規定により国土交通大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、地方運輸局長に行わせることができる。



 (禁止行為等)
第八十四条の二 
  何人も、行使の目的をもつて保険標章、共済標章若しくは保険・共済除外標章を偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造に係るこれらの物件を使用してはならない。

2 何人も、行使の目的をもつて保険標章、共済標章若しくは保険・共済除外標章に紛らわしい外観を有する物件を製造し、又はこれらの物件を使用してはならない。

3 何人も、この法律の規定による場合その他正当な理由がある場合を除き、保険標章又は共済標章を他人に交付してはならない。

4 保険標章又は共済標章の適正な交付の確保に関し保険会社又は組合の遵守すべき事項は、国土交通省令で定める。



 (証明書の提示)
第八十五条 
  国土交通大臣は、第一条の目的を達成するため必要があると認めるときは、その職員に、道路その他自動車の所在する場所において、自動車を運転する者に対し、自動車損害賠償責任保険証明書又は自動車損害賠償責任共済証明書の提示を求めさせることができる。

2 前項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。



 (政令への委任)
第八十五条の二 
  この法律に規定するもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。



 (国土交通大臣の任務)
第八十六条 
  国土交通大臣は、この法律に規定する職権の行使にあたつては、被害者の保護に欠けることがないように努めなければならない。





   第六章 罰則



第八十六条の二 
  第八十四条の二第一項の規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第八十六条の三 第八十四条の二第二項又は第三項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。



第八十七条 
  次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
 一 第五条の規定に違反した者
 二 偽りその他不正の手段により、自動車損害賠償責任保険証明書若しくは自動車損害賠償責任共済証明書又は保険標章、共済標章若しくは保険・共済除外標章の交付又は再交付を受けた者八十七条の二 第二十八条の四第三項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者は、三十万円以下の罰金に処する。八十八条 第八条又は第九条の三第一項若しくは第二項(第九条の五第三項及び第十条の二第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、三万円以下の罰金に処する。



第八十九条 
  次の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
 一 第九条の三第三項(第九条の五第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
 二 第八十四条の二第四項の規定に基づく国土交通省令の規定に違反した者
 三 第八十五条第一項の規定による提示を拒み、又は妨げた者



第九十条 
  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第八十七条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。



第九十一条 
  保険会社又は組合が第二十四条第一項又は第二項の規定に違反したときは、保険会社の取締役(保険業法第二条第九項に規定する外国損害保険会社等にあつては、その日本における代表者。以下同じ。)又は組合の理事は、三十万円以下の過料に処する。

2 保険会社又は損害保険料率算出団体が第二十六条の三の命令に違反したときは、保険会社の取締役又は損害保険料率算出団体の理事は、三十万円以下の過料に処する。

3 組合が第二十七条第三項(第二十七条の二第一項及び第二項において準用する場合を含む。)の命令に違反したときは、組合の理事は、三十万円以下の過料に処する。

4 保険会社又は組合が第二十八条の四第四項の命令に違反したときは、保険会社の取締役又は組合の理事は、三十万円以下の過料に処する。





   附 則



 (施行期日)
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して八箇月をこえない範囲内において政令で定める日とする。
    〔昭和三〇年八月政令一六四号により、五〇条及び八二条二項の規定は、昭和三〇・八・五から施行・その他の規定の施行期日は、昭和三〇年一〇月政令二八五号を参照〕



 (一般会計からの繰入れの特例)
2 第五十一条及び第八十二条第二項の規定は、当分の間、適用しない。



3 前項の場合においては、自動車損害賠償責任再保険特別会計法(昭和三十年法律第百三十四号)第四条第一項中「保障勘定への繰入金」とあるのは「保障勘定への繰入金、法の規定による自動車損害賠償責任再保険事業及び自動車損害賠償責任共済保険事業の業務の取扱いに関する諸費に充てるための業務勘定への繰入金」と、同法第六条中「法第五十一条及び法第八十二条第二項の規定による一般会計からの繰入金、保障勘定からの繰入金及び附属雑収入」とあるのは「保険勘定及び保障勘定からの繰入金並びに附属雑収入」とする。



 (他の法律の改正)
4 保険業法の一部を次のように改正する。
  〔略〕



5 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
  〔略〕



 (経過規定)
6 自動車保険の契約(被保険者が自動車の運行によつて他人に加えた損害の賠償責任を負うことにより受けることあるべき損害をてん補することを目的とする保険契約をいう。)であつて第五条の規定の施行の日前に締結されたもの(以下「旧契約」という。)の保険契約者は、当該自動車につき責任保険の契約が締結されたときは、旧契約を解除することができる。



7 前項の規定により旧契約が解除されたときは、旧契約の保険者(以下単に「保険者」という。)は、保険契約者に対して、政令で定める金額の解約返戻金を支払わなければならない。



8 旧契約の保険金額は、当該自動車につき責任保険の契約が締結されたときは、政令で定める金額まで増加したものとする。



9 旧契約の保険契約者は、当該自動車につき責任保険の契約が締結されたときは、保険者に対して、政令で定める金額の支払を請求することができる。ただし、附則第六項の規定により旧契約を解除したときは、この限りでない。



10 旧契約の保険契約者が、前項本文の規定による請求をしたときは、その時以後、旧契約の保険金額は、附則第八項の規定により増加した時以前の金額に復するものとする。



11 旧契約に係る自動車につき責任保険の契約が締結された場合において、旧契約及び責任保険の契約によりてん補すべき損害が生じたときは、まず責任保険の契約による損害のてん補を行い、そのてん補金額が損害の全部をてん補するに足りないときは、その足りない金額を旧契約によりてん補するものとする。



   附 則〔平成一三年六月二九日法律第八三号抄〕



 (施行期日)
第一条 
  この法律は、平成十四年四月一日から施行する。



 (経過措置)
第二条 
  この法律の施行前に政府と保険会社との間に成立した再保険関係及び政府と組合との間に成立した保険関係については、第一条の規定による改正前の自動車損害賠償保障法(以下「旧自賠法」という。)第四十条から第五十一条まで及び第八十三条の規定は、この法律の施行後も、なおその効力を有する。



2 前項の場合においては、同項の規定によりなおその効力を有することとされた旧自賠法第五十一条中「自動車損害賠償責任再保険特別会計」とあるのは「自動車損害賠償保障事業特別会計」と、第一条の規定による改正後の自動車損害賠償保障法(以下「新自賠法」という。)第二十八条の四第一項第一号中「第七十八条」とあるのは「第七十八条並びに自動車損害賠償保障法及び自動車損害賠償責任再保険特別会計法の一部を改正する法律(平成十三年法律第八十三号。以下「改正法」という。)附則第二条第一項の規定によりなおその効力を有することとされた改正法第一条の規定による改正前の自動車損害賠償保障法(以下「なお効力を有する旧自賠法」という。)第四十条及び第四十六条(なお効力を有する旧自賠法第五十条第一項において準用する場合を含む。)」と、同項第二号中「準用する場合を含む。)」とあるのは「準用する場合を含む。)並びになお効力を有する旧自賠法第四十条及び第四十五条(なお効力を有する旧自賠法第五十条第一項において準用する場合を含む。)」と、新自賠法附則第二項中「第八十二条第二項」とあるのは「第八十二条第二項及びなお効力を有する旧自賠法第五十一条」と、新自賠法附則第三項中「、「法第七十六条」」とあるのは「「法第七十六条」と、特別会計法附則第十三項中「納付金、なお効力を有する旧自賠法第五十一条の規定による一般会計からの繰入金」とあるのは「納付金」と、特別会計法附則第十六項中「、なお効力を有する旧自賠法第五十一条の規定による一般会計からの繰入金及び附属雑収入」とあるのは「及び附属雑収入」と、特別会計法附則第十八項中「納付金、なお効力を有する旧自賠法第五十一条の規定による一般会計からの繰入金」とあるのは「納付金」」とする。



第三条 
  この法律の施行前に政府と保険会社との間に再保険関係が成立した責任保険の契約に係る保険会社が被保険者に対して支払うべき保険金若しくは新自賠法第十六条第一項の規定により被害者に対して支払うべき損害賠償額の支払又はこの法律の施行前に政府と組合との間に保険関係が成立した責任共済の契約に係る組合が被共済者に対して支払うべき共済金若しくは新自賠法第二十三条の三第一項において準用する新自賠法第十六条第一項の規定により被害者に対して支払うべき損害賠償額の支払については、新自賠法第十六条の六(新自賠法第二十三条の三第一項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。



 (罰則に関する経過措置)
第五条 
  この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。



 (政令への委任)
第六条 
  附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要となる経過措置は、政令で定める。


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