民事再生法

         第一章 総則
         第二章 再生手続の開始
              第一節 再生手続開始の申立て
              第二節 再生手続開始の決定
         第三章 再生手続の機関
              第一節 監督委員
              第二節 調査委員
              第三節 管財人
              第四節 保全管理人



         第四章 再生債権
              第一節 再生債権者の権利
              第二節 再生債権の届出
              第三節 再生債権の調査及び確定
              第四節 債権者集会及び債権者委員会
         第五章 共益債権、一般優先債権及び開始後債権
         第六章 再生債務者の財産の調査及び確保
              第一節 再生債務者の財産状況の調査
              第二節 否認権
              第三節 法人の役員等の責任の追及
              第四節 担保権の消滅
         第七章 再生計画
              第一節 再生計画の条項
              第二節 再生計画案の提出
              第三節 再生計画案の決議
              第四節 再生計画の認可等


         第八章 再生計画認可後の手続
         第九章 再生手続の廃止
         第十章 住宅資金貸付債権に関する特則
         第十一章 外国倒産処理手続がある場合の特則
         第十二章 簡易再生及び同意再生に関する特則
              第一節 簡易再生
              第二節 同意再生
          第十三章 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則
              第一節 小規模個人再生
              第二節 給与所得者等再生
         第十四章 罰則
         附  則











   第四章 再生債権






    第一節 再生債権者の権利





(再生債権となる請求権)
第八十四条
 再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権は、再生債権とする。

2  次に掲げる請求権も、再生債権とする。
一  再生手続開始後の利息の請求権
二  再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
三  再生手続参加の費用の請求権



(再生債権の弁済の禁止)
第八十五条
 再生債権については、再生手続開始後は、この法律に特別の定めがある場合を除き、再生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。

2  再生債務者を主要な取引先とする中小企業者が、その有する再生債権の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができる。

3  裁判所は、前項の規定による許可をする場合には、再生債務者と同項の中小企業者との取引の状況、再生債務者の資産状態、利害関係人の利害その他一切の事情を考慮しなければならない。

4  再生債務者等は、再生債権者から第二項の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならない。この場合において、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければならない。

5  少額の再生債権を早期に弁済することにより再生手続を円滑に進行することができるとき、又は少額の再生債権を早期に弁済しなければ再生債務者の事業の継続に著しい支障を来すときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。



(再生債権者の手続参加)
第八十六条
 再生債権者は、その有する再生債権をもって再生手続に参加することができる。

2  破産法第二十四条 から第二十九条 までの規定は、再生手続が開始された場合における再生債権者の権利の行使について準用する。この場合において、同法第二十四条 、第二十五条、第二十六条第一項本文、第二十八条及び第二十九条本文中「破産ノ宣告」とあり、並びに同法第二十四条 、第二十五条及び第二十八条中「破産宣告」とあるのは「再生手続ノ開始」と、同法第二十四条 、第二十五条、第二十六条第一項、第二十八条及び第二十九条ただし書中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同法第二十四条 中「各破産財団ニ対シ」とあるのは「各再生手続ニ於テ」と、同法第二十六条第三項 中「破産者」とあるのは「再生債務者」と読み替えるものとする。



(再生債権者の議決権)
第八十七条
 再生債権者は、次に掲げる債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める金額に応じて、議決権を有する。
一  再生手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のもの 再生手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に一年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する法定利息を債権額から控除した額
二  金額及び存続期間が確定している定期金債権 各定期金につき前号の規定に準じて算定される額の合計額(その額が法定利率によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額を超えるときは、その元本額)
三  次に掲げる債権 再生手続開始の時における評価額
イ 再生手続開始後に期限が到来すべき不確定期限付債権で無利息のもの
ロ 金額又は存続期間が不確定である定期金債権
ハ 金銭の支払を目的としない債権
ニ 金銭債権で、その額が不確定であるもの又はその額を外国の通貨をもって定めたもの
ホ 条件付債権
ヘ 再生債務者に対して行うことがある将来の請求権
四  前三号に掲げる債権以外の債権 債権額

2  前項の規定にかかわらず、再生債権者は、第八十四条第二項に掲げる請求権及び第九十七条に規定する再生手続開始前の罰金等については、議決権を有しない。



(別除権者の手続参加)
第八十八条
 別除権者は、その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分についてのみ、再生債権者として、その権利を行うことができる。ただし、第五十三条第一項に規定する担保権によって担保される債権の全部又は一部が再生手続が開始された後に担保されないこととなった場合には、その債権の当該全部又は一部について、再生債権者として、その権利を行うことを妨げない。



(再生債権者が外国で受けた弁済)
第八十九条
 再生債権者は、再生手続開始の決定があった後に、再生債務者の財産で外国にあるものに対して権利を行使したことにより、再生債権について弁済を受けた場合であっても、その弁済を受ける前の債権の全部をもって再生手続に参加することができる。

2  前項の再生債権者は、他の再生債権者が自己の受けた弁済と同一の割合の弁済を受けるまでは、再生手続により、弁済を受けることができない。

3  第一項の再生債権者は、外国において弁済を受けた債権の部分については、議決権を行使することができない。



(代理委員)
第九十条
 再生債権者は、裁判所の許可を得て、共同して又は各別に、一人又は数人の代理委員を選任することができる。

2  代理委員は、これを選任した再生債権者のために、再生手続に属する一切の行為をすることができる。

3  代理委員が数人あるときは、共同してその権限を行使する。ただし、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。

4  裁判所は、代理委員の権限の行使が著しく不公正であると認めるときは、第一項の許可を取り消すことができる。



(報償金等)
第九十一条
 裁判所は、再生債権者若しくは代理委員又はこれらの者の代理人が再生債務者の再生に貢献したと認められるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、再生債務者等が、再生債務者財産から、これらの者に対し、その事務処理に要した費用を償還し、又は報償金を支払うことを許可することができる。

2  前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。



(相殺権)
第九十二条
 再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が再生債権の届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、再生債権者は、その期間内に限り、再生手続によらないで、相殺をすることができる。債務が期限付であるときも、同様とする。

2  破産法第百三条 の規定は、前項の規定による相殺について準用する。この場合において、同条第一項 前段中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、「破産宣告」とあるのは「再生手続ノ開始」と読み替えるものとする。



(相殺の禁止)
第九十三条
 次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
一  再生債権者が再生手続開始後に再生債務者に対して債務を負担したとき。
二  再生債権者が支払の停止又は破産、再生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この条において「支払の停止等」という。)があったことを知って再生債務者に対して債務を負担したとき。ただし、その負担が法定の原因に基づくとき、再生債権者が支払の停止等があったことを知った時より前に生じた原因に基づくとき、又は破産宣告、再生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始のいずれの時よりも一年以上前に生じた原因に基づくときは、この限りでない。
三  再生債務者に対して債務を負担する者が再生手続開始後に他人の再生債権を取得したとき。
四  再生債務者に対して債務を負担する者が支払の停止等があったことを知って再生債権を取得したとき。ただし、その取得が法定の原因に基づくとき、再生債権者が支払の停止等があったことを知った時より前に生じた原因に基づくとき、又は破産宣告、再生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始のいずれの時よりも一年以上前に生じた原因に基づくときは、この限りでない。





    第二節 再生債権の届出





(届出)
第九十四条
 再生手続に参加しようとする再生債権者は、第三十四条の規定により定められた再生債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、各債権について、その内容及び原因、議決権の額その他最高裁判所規則で定める事項を裁判所に届け出なければならない。

2  別除権者は、前項に規定する事項のほか、別除権の目的及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額を届け出なければならない。



(届出の追完等)
第九十五条
 再生債権者がその責めに帰することができない事由によって債権届出期間内に届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一月以内に限り、その届出の追完をすることができる。

2  前項に定める届出の追完の期間は、伸長し、又は短縮することができない。

3  債権届出期間経過後に生じた再生債権については、その権利の発生した後一月の不変期間内に、届出をしなければならない。

4  第一項及び第三項の届出は、再生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、することができない。

5  第一項、第二項及び前項の規定は、再生債権者が、その責めに帰することができない事由によって、届け出た事項について他の再生債権者の利益を害すべき変更を加える場合について準用する。



(届出名義の変更)
第九十六条
 届出をした再生債権を取得した者は、債権届出期間が経過した後でも、届出名義の変更を受けることができる。第百一条第三項の規定により認否書に記載された再生債権を取得した者についても、同様とする。



(罰金、科料等の届出)
第九十七条
 再生手続開始前の罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。以下「再生手続開始前の罰金等」という。)については、国又は地方公共団体は、遅滞なく、その額及び原因を裁判所に届け出なければならない。



(時効の中断)
第九十八条
 再生手続参加は、時効中断の効力を生ずる。ただし、再生債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、この限りでない。





    第三節 再生債権の調査及び確定





(再生債権者表の作成)
第九十九条
 裁判所書記官は、届出があった再生債権及び第百一条第三項の規定により再生債務者等が認否書に記載した再生債権について、再生債権者表を作成しなければならない。

2  前項の再生債権者表には、各債権について、その内容及び原因、議決権の額、第九十四条第二項に規定する債権の額その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。



(再生債権の調査)
第百条
 裁判所による再生債権の調査は、前条第二項に規定する事項について、再生債務者等が作成した認否書並びに再生債権者及び再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)の書面による異議に基づいてする。



(認否書の作成及び提出)
第百一条
 再生債務者等は、債権届出期間内に届出があった再生債権について、その内容及び議決権についての認否を記載した認否書を作成しなければならない。

2  再生債務者等は、第九十五条の規定による届出又は届出事項の変更があった再生債権についても、その内容及び議決権(当該届出事項の変更があった場合には、変更後の内容及び議決権)についての認否を前項の認否書に記載することができる。

3  再生債務者等は、届出がされていない再生債権があることを知っている場合には、当該再生債権について、自認する内容その他最高裁判所規則で定める事項を第一項の認否書に記載しなければならない。

4  再生債務者等は、第三十四条に規定する再生債権の調査をするための期間(以下「一般調査期間」という。)前の裁判所の定める期限までに、前三項の規定により作成した認否書を裁判所に提出しなければならない。

5  前項の規定により提出された認否書に、第一項に規定する再生債権の内容又は議決権についての認否の記載がないときは、再生債務者等において、これを認めたものとみなす。当該認否書に第二項に規定する再生債権の内容又は議決権のいずれかについての認否の記載がない場合についても、同様とする。



(一般調査期間における調査)
第百二条
 届出をした再生債権者(以下「届出再生債権者」という。)は、一般調査期間内に、裁判所に対し、前条第一項若しくは第二項に規定する再生債権の内容若しくは議決権又は同条第三項の規定により認否書に記載された再生債権の内容について、書面で、異議を述べることができる。

2  再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)は、一般調査期間内に、裁判所に対し、前項に規定する再生債権の内容について、書面で、異議を述べることができる。

3  一般調査期間を変更する決定をしたときは、その決定書は、再生債務者、管財人及び届出再生債権者に送達しなければならない。

4  前項の規定による送達は、第十条第四項に規定する方法によりすることができる。

5  前項の規定による送達をした場合においては、その郵便物等が通常到達すべきであった時に、送達があったものとみなす。



(特別調査期間における調査)
第百三条
 裁判所は、第九十五条の規定による届出又は届出事項の変更があった再生債権について、その調査をするための期間(以下「特別調査期間」という。)を定めなければならない。ただし、再生債務者等が第百一条第二項の規定により認否書に当該再生債権の内容又は議決権についての認否を記載している場合は、この限りでない。

2  前項本文の場合には、特別調査期間に関する費用は、当該再生債権を有する者の負担とする。

3  再生債務者等は、特別調査期間に係る再生債権について、その内容及び議決権についての認否を記載した認否書を作成し、特別調査期間前の裁判所の定める期限までに、これを裁判所に提出しなければならない。この場合には、第百一条第五項前段の規定を準用する。

4  届出再生債権者は前項の再生債権の内容又は議決権について、再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)は同項の再生債権の内容について、特別調査期間内に、裁判所に対して、書面で、異議を述べることができる。

5  前条第三項から第五項までの規定は、特別調査期間を定める決定又はこれを変更する決定をした場合における決定書の送達について準用する。



(再生債権の調査の結果)
第百四条
 再生債権の調査において、再生債務者等が認め、かつ、調査期間内に届出再生債権者の異議がなかったときは、その再生債権の内容又は議決権の額(第百一条第三項の規定により認否書に記載された再生債権にあっては、その内容)は、確定する。

2  裁判所書記官は、再生債権の調査の結果を再生債権者表に記載しなければならない。

3  第一項の規定により確定した再生債権については、再生債権者表の記載は、再生債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有する。



(再生債権の査定の裁判)
第百五条
 再生債権の調査において、再生債権の内容について再生債務者等が認めず、又は届出再生債権者が異議を述べた場合には、当該再生債権(以下「異議等のある再生債権」という。)を有する再生債権者は、その内容の確定のために、当該再生債務者等及び当該異議を述べた届出再生債権者(以下この条から第百七条まで及び第百九条において「異議者等」という。)の全員を相手方として、裁判所に査定の申立てをすることができる。ただし、第百七条及び第百九条の場合は、この限りでない。

2  前項本文の査定の申立ては、異議等のある再生債権に係る調査期間の末日から一月の不変期間内にしなければならない。

3  第一項本文の査定の申立てがあった場合には、裁判所は、当該申立てを不適法として却下する場合を除き、査定の裁判をしなければならない。

4  査定の裁判においては、異議等のある再生債権について、その債権の存否及びその内容を定める。

5  裁判所は、査定の裁判をする場合には、異議者等を審尋しなければならない。

6  第一項本文の査定の申立てについての裁判があった場合には、その決定書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項の規定は、適用しない。



(査定の申立てについての裁判に対する異議の訴え)
第百六条
 前条第一項本文の査定の申立てについての裁判に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。

2  前項の訴えは、再生裁判所が管轄する。

3  第一項の訴えは、これを提起する者が、異議等のある再生債権を有する再生債権者であるときは異議者等の全員を、異議者等であるときは当該再生債権者を、それぞれ被告としなければならない。

4  第一項の訴えの口頭弁論は、同項の期間を経過した後でなければ開始することができない。

5  同一の債権に関し第一項の訴えが数個同時に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。この場合においては、民事訴訟法第四十条第一項 から第三項 までの規定を準用する。

6  第一項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、同項の裁判を認可し、又は変更する。



(異議等のある再生債権に関する訴訟の受継)
第百七条
 異議等のある再生債権に関し再生手続開始当時訴訟が係属する場合において、再生債権者がその内容の確定を求めようとするときは、異議者等の全員を当該訴訟の相手方として、訴訟手続の受継の申立てをしなければならない。

2  第百五条第二項の規定は、前項の申立てについて準用する。



(主張の制限)
第百八条
 第百五条第一項本文の査定の申立てに係る査定の手続又は第百六条第一項の訴えの提起若しくは前条第一項の規定による受継に係る訴訟手続においては、再生債権者は、異議等のある再生債権の内容及び原因について、再生債権者表に記載されている事項のみを主張することができる。



(執行力ある債務名義のある債権等に対する異議の主張)
第百九条
 異議等のある再生債権のうち執行力ある債務名義又は終局判決のあるものについては、異議者等は、再生債務者がすることのできる訴訟手続によってのみ、異議を主張することができる。

2  前項に規定する再生債権に関し再生手続開始当時訴訟が係属する場合において、異議者等が同項の規定による異議を主張しようとするときは、異議者等は、当該再生債権を有する再生債権者を相手方とする訴訟手続を受け継がなければならない。

3  第百五条第二項は第一項の規定による異議の主張又は前項の規定による受継について、第百六条第四項及び第五項並びに前条の規定は前二項の場合について準用する。この場合においては、第百六条第四項中「同項の期間」とあるのは、「異議等のある再生債権に係る調査期間の末日から一月の不変期間」と読み替えるものとする。

4  前項において準用する第百五条第二項に規定する期間内に第一項の規定による異議の主張又は第二項の規定による受継がされなかった場合には、異議者等が再生債権者であるときは第百二条第一項又は第百三条第四項の異議はなかったものとみなし、異議者等が再生債務者等であるときは再生債務者等においてその再生債権を認めたものとみなす。



(再生債権の確定に関する訴訟の結果の記載)
第百十条
 裁判所書記官は、再生債務者等又は再生債権者の申立てにより、再生債権の確定に関する訴訟の結果(第百五条第一項本文の査定の申立てについての裁判に対する第百六条第一項の訴えが、同項に規定する期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、当該裁判の内容)を再生債権者表に記載しなければならない。



(再生債権の確定に関する訴訟の判決等の効力)
第百十一条
 再生債権の確定に関する訴訟についてした判決は、再生債権者の全員に対して、その効力を有する。

2  第百五条第一項本文の査定の申立てについての裁判に対する第百六条第一項の訴えが、同項に規定する期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、当該裁判は、再生債権者の全員に対して、確定判決と同一の効力を有する。



(訴訟費用の償還)
第百十二条
 再生債務者財産が再生債権の確定に関する訴訟(第百五条第一項本文の査定の申立てについての裁判を含む。)によって利益を受けたときは、異議を主張した再生債権者は、その利益の限度において共益債権者として訴訟費用の償還を請求することができる。




(再生手続開始前の罰金等についての不服の申立て)
第百十三条
 再生手続開始前の罰金等については、第百条から前条までの規定は、適用しない。

2  第九十七条の規定による届出があった追徴金又は過料の原因が審査請求、訴訟(刑事訴訟を除く。)その他の不服の申立てをすることができる処分である場合には、再生債務者等は、当該追徴金又は過料について、当該不服の申立てをする方法で、異議を主張することができる。この場合においては、第百九条第二項の規定を準用する。

3  前項前段の規定による異議の主張又は同項後段において準用する第百九条第二項の規定による受継は、再生債務者等が前項に規定する追徴金又は過料の届出があったことを知った日から一月の不変期間内にしなければならない。

4  第百四条第二項の規定は第九十七条の規定による届出があった再生手続開始前の罰金等について、第百八条、第百十条及び第百十一条第一項の規定は第二項の規定による異議又は受継があった場合について準用する。





    第四節 債権者集会及び債権者委員会





(債権者集会の招集)
第百十四条
 裁判所は、再生債務者等若しくは第百十八条第二項に規定する債権者委員会の申立て又は知れている再生債権者の総債権について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる債権を有する再生債権者の申立てがあったときは、債権者集会を招集しなければならない。これらの申立てがない場合であっても、裁判所は、相当と認めるときは、債権者集会を招集することができる。



(債権者集会の期日の呼出し等)
第百十五条
 債権者集会の期日には、再生債務者、管財人、届出再生債権者及び再生のために債務を負担し又は担保を提供する者があるときは、その者を呼び出さなければならない。この場合における期日の呼出しは、呼出状の送達によってする。

2  前項の規定にかかわらず、議決権を行使することができない届出再生債権者は、呼び出さないことができる。

3  債権者集会の期日は、労働組合等に通知しなければならない。

4  裁判所は、債権者集会の期日及び会議の目的である事項を公告しなければならない。

5  債権者集会の期日においてその延期又は続行について言渡しがあったときは、第一項及び前二項の規定は、適用しない。



(債権者集会の指揮)
第百十六条
 債権者集会は、裁判所が指揮する。



第百十七条
 削除



(債権者委員会)
第百十八条
 裁判所は、再生債権者をもって構成する委員会がある場合には、利害関係人の申立てにより、当該委員会が、この法律の定めるところにより、再生手続に関与することを承認することができる。ただし、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限る。
一  委員の数が、三人以上最高裁判所規則で定める人数以内であること。
二  再生債権者の過半数が当該委員会が再生手続に関与することについて同意していると認められること。
三  当該委員会が再生債権者全体の利益を適切に代表すると認められること。

2  裁判所は、必要があると認めるときは、再生手続において、前項の規定により承認された委員会(以下「債権者委員会」という。)に対して、意見の陳述を求めることができる。

3  債権者委員会は、再生手続において、裁判所、再生債務者等又は監督委員に対して、意見を述べることができる。

4  債権者委員会に再生債務者の再生に貢献する活動があったと認められるときは、裁判所は、当該活動のために必要な費用を支出した再生債権者の申立てにより、再生債務者財産から、当該再生債権者に対し、相当と認める額の費用を償還することを許可することができる。

5  裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも第一項の規定による承認を取り消すことができる。





   第五章 共益債権、一般優先債権及び開始後債権





(共益債権となる請求権)
第百十九条
 次に掲げる請求権は、共益債権とする。
一  再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
二  再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権
三  再生計画の遂行に関する費用の請求権。ただし、再生手続終了後に生じたものを除く。
四  第六十一条第一項(第六十三条、第七十八条及び第八十三条第一項において準用する場合を含む。)、第九十一条第一項及び第二百二十三条第九項(第二百四十四条において準用する場合を含む。)の規定により支払うべき費用、報酬及び報償金の請求権
五  再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権
六  事務管理又は不当利得により再生手続開始後に再生債務者に対して生じた請求権
七  その他再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で、再生手続開始後に生じたもの



(開始前の借入金等)
第百二十条
 再生債務者(保全管理人が選任されている場合を除く。以下この項及び第三項において同じ。)が、再生手続開始の申立て後再生手続開始前に、資金の借入れ、原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことができない行為をする場合には、裁判所は、その行為によって生ずべき相手方の請求権を共益債権とする旨の許可をすることができる。

2  裁判所は、監督委員に対し、前項の許可に代わる承認をする権限を付与することができる。

3  再生債務者が第一項の許可又は前項の承認を得て第一項に規定する行為をしたときは、その行為によって生じた相手方の請求権は、共益債権とする。

4  保全管理人が再生債務者の業務及び財産に関し権限に基づいてした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権は、共益債権とする。



(共益債権の取扱い)
第百二十一条
 共益債権は、再生手続によらないで、随時弁済する。

2  共益債権は、再生債権に先立って、弁済する。

3  共益債権に基づき再生債務者の財産に対し強制執行又は仮差押えがされている場合において、その強制執行又は仮差押えが再生に著しい支障を及ぼし、かつ、再生債務者が他に換価の容易な財産を十分に有するときは、裁判所は、再生手続開始後において、再生債務者等の申立てにより又は職権で、担保を立てさせて、又は立てさせないで、その強制執行又は仮差押えの中止又は取消しを命ずることができる。

4  裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

5  第三項の規定による中止又は取消しの命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

6  前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。



(一般優先債権)
第百二十二条
 一般の先取特権その他一般の優先権がある債権(共益債権であるものを除く。)は、一般優先債権とする。

2  一般優先債権は、再生手続によらないで、随時弁済する。

3  優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、再生手続開始の時からさかのぼって計算する。

4  前条第三項から第六項までの規定は、一般優先債権に基づく強制執行若しくは仮差押え又は一般の先取特権の実行としての競売について準用する。



(開始後債権)
第百二十三条
 再生手続開始後の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権、一般優先債権又は再生債権であるものを除く。)は、開始後債権とする。

2  開始後債権は、再生手続が開始された時から再生計画で定められた弁済期間が満了する時(再生計画認可の決定が確定する前に再生手続が終了した場合にあっては再生手続が終了した時、その期間の満了前に、再生計画に基づく弁済が完了した場合又は再生計画が取り消された場合にあっては弁済が完了した時又は再生計画が取り消された時)までの間は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。

3  開始後債権に基づく再生債務者の財産に対する強制執行、仮差押え及び仮処分の申立ては、前項に規定する期間は、することができない。





   第六章 再生債務者の財産の調査及び確保





    第一節 再生債務者の財産状況の調査





(財産の価額の評定等)
第百二十四条
 再生債務者等は、再生手続開始後(管財人については、その就職の後)遅滞なく、再生債務者に属する一切の財産につき再生手続開始の時における価額を評定しなければならない。

2  再生債務者等は、前項の規定による評定を完了したときは、直ちに再生手続開始の時における財産目録及び貸借対照表を作成し、これらを裁判所に提出しなければならない。

3  裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、評価人を選任し、再生債務者の財産の評価を命ずることができる。



(裁判所への報告)
第百二十五条
 再生債務者等は、再生手続開始後(管財人については、その就職の後)遅滞なく、次の事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならない。
一  再生手続開始に至った事情
二  再生債務者の業務及び財産に関する経過及び現状
三  第百四十二条第一項の規定による保全処分又は第百四十三条第一項の規定による査定の裁判を必要とする事情の有無
四  その他再生手続に関し必要な事項

2  再生債務者等は、前項の規定によるもののほか、裁判所の定めるところにより、再生債務者の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならない。

3  監督委員は、裁判所の定めるところにより、再生債務者の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならない。



(財産状況報告集会)
第百二十六条
 再生債務者の財産状況を報告するために招集された債権者集会においては、再生債務者等は、前条第一項に掲げる事項の要旨を報告しなければならない。

2  前項の債権者集会(以下「財産状況報告集会」という。)においては、裁判所は、再生債務者、管財人又は届出再生債権者から、管財人の選任並びに再生債務者の業務及び財産の管理に関する事項につき、意見を聴かなければならない。

3  財産状況報告集会においては、労働組合等は、前項に規定する事項について意見を述べることができる。





    第二節 否認権





(否認権)
第百二十七条
 次に掲げる行為は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。
一  再生債務者が再生債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、再生債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
二  再生債務者が支払の停止又は破産、再生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この条から第百二十九条までにおいて「支払の停止等」という。)があった後にした再生債権者を害する行為及び担保の供与又は債務の消滅に関する行為。ただし、これにより利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと又は再生債権者を害する事実を知っていたときに限る。
三  前号の行為であって再生債務者の親族又は同居者を相手方とするもの。ただし、相手方が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び再生債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
四  再生債務者が支払の停止等があった後又はその前三十日以内にした担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、再生債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が再生債務者の義務に属しないもの。ただし、債権者において、その行為の当時、再生債務者が他の再生債権者との平等を害することを知ってした事実を知らなかったとき(その行為が支払の停止等があった後にされたものである場合にあっては、支払の停止等があったことをも知らなかったときに限る。)は、この限りでない。
五  再生債務者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為

2  前項の規定は、再生債務者が再生手続開始前の罰金等につき、その徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為については、適用しない。



(手形債務支払の場合の例外)
第百二十八条
 前条第一項の規定は、再生債務者から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。

2  前項の場合において、最終の償還義務者又は手形の振出しを委託した者が振出しの当時支払の停止等があったことを知り、又は過失によって知らなかったときは、第五十六条第一項の規定により否認権を行使する権限を付与された監督委員(以下「否認権限を有する監督委員」という。)又は管財人は、これらの者に再生債務者が支払った金額を償還させることができる。



(権利変動の対抗要件の否認)
第百二十九条
 支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から十五日を経過した後悪意でしたものであるときは、これを否認することができる。ただし、当該仮登記又は仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいてされた本登記又は本登録は、この限りでない。

2  前項の規定は、権利取得の効力を生ずる登録について準用する。



(執行行為の否認)
第百三十条
 否認権は、否認しようとする行為につき、執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行うことを妨げない。



(支払の停止を知っていたことに基づく否認の制限)
第百三十一条
 再生手続開始の申立ての日から一年以上前にした行為は、支払の停止の事実を知っていたことを理由として否認することができない。



(否認権行使の効果等)
第百三十二条
 否認権の行使は、再生債務者財産を原状に復させる。

2  第百二十七条第一項第五号に掲げる行為が否認された場合において、相手方は、当該行為の当時善意であったときは、その現に受けている利益を償還すれば足りる。

3  再生債務者の行為が否認されたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
一  再生債務者の受けた反対給付が再生債務者財産中に現存する場合 当該反対給付の返還を請求する権利
二  再生債務者の受けた反対給付によって生じた利益の全部が再生債務者財産中に現存する場合 共益債権者としてその現存利益の返還を請求する権利
三  再生債務者の受けた反対給付によって生じた利益が再生債務者財産中に現存しない場合 再生債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
四  再生債務者の受けた反対給付によって生じた利益の一部が再生債務者財産中に現存する場合 共益債権者としてその現存利益の返還を請求する権利及び再生債権者として反対給付と現存利益との差額の償還を請求する権利



(相手方の債権の回復)
第百三十三条
 再生債務者の行為が否認された場合において、相手方がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、相手方の債権は、これによって原状に復する。



(転得者に対する否認権)
第百三十四条
 次に掲げる場合には、否認権は、転得者に対しても、行使することができる。
一  転得者が転得の当時、それぞれその前者に対する否認の原因のあることを知っていたとき。
二  転得者が再生債務者の親族又は同居者であるとき。ただし、転得の当時、それぞれその前者に対する否認の原因のあることを知らなかったときは、この限りでない。
三  転得者が無償行為又はこれと同視すべき有償行為によって転得した場合において、それぞれその前者に対して否認の原因があるとき。

2  第百三十二条第二項の規定は、前項第三号の規定により否認権の行使があった場合について準用する。



(否認権の行使)
第百三十五条
 否認権は、訴え又は否認の請求によって、否認権限を有する監督委員又は管財人が行う。

2  前項の訴え及び否認の請求事件は、再生裁判所が管轄する。

3  第一項に規定する方法によるほか、管財人は、抗弁によっても、否認権を行うことができる。



(否認の請求)
第百三十六条
 否認の請求をするときは、その原因たる事実を疎明しなければならない。

2  否認の請求を認容し、又はこれを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならない。

3  裁判所は、前項の決定をする場合には、相手方又は転得者を審尋しなければならない。

4  否認の請求を認容する決定があった場合には、その決定書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項の規定は、適用しない。



(否認の請求を認容する決定に対する異議の訴え)
第百三十七条
 否認の請求を認容する決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。

2  前項の訴えは、再生裁判所が管轄する。

3  第一項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、同項の決定を認可し、変更し、又は取り消す。

4  第一項の決定を認可する判決が確定したときは、その決定は、確定判決と同一の効力を有する。同項の訴えが、同項に規定する期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときも、同様とする。



(否認権限を有する監督委員の訴訟参加等)
第百三十八条
 否認権限を有する監督委員は、第百三十五条第一項の規定にかかわらず、否認権の行使に係る相手方(以下この条において「相手方」という。)及び再生債務者間の訴訟が係属する場合には、否認権を行使するため、相手方を被告として、当事者としてその訴訟に参加することができる。ただし、当該訴訟の目的である権利又は義務に係る請求をする場合に限る。

2  否認権限を有する監督委員が当事者である否認の訴え(前条第一項の訴え及び第百四十条第二項の規定により受継された訴訟手続を含む。)が係属する場合には、再生債務者は、当該訴えの目的である権利又は義務に係る請求をするため、相手方を被告として、当事者としてその訴訟に参加することができる。

3  前項に規定する場合には、相手方は、当該訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、再生債務者を被告として、当該訴訟の目的である権利又は義務に係る訴えをこれに併合して提起することができる。

4  民事訴訟法第四十条第一項 から第三項 までの規定は前三項の場合について、同法第四十三条 並びに第四十七条第二項 及び第三項 の規定は第一項 及び第二項 の規定による参加の申出について準用する。



(否認権行使の期間)
第百三十九条
 否認権は、再生手続開始の日から二年を経過したときは、行使することができない。否認しようとする行為の日から二十年を経過したときも、同様とする。



(詐害行為取消訴訟等)
第百四十条
 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条 の規定により再生債権者の提起した訴訟又は破産法 の規定による否認の訴訟が再生手続開始当時係属するときは、その訴訟手続は、中断する。

2  前項の規定によって中断した訴訟手続は、否認権限を有する監督委員又は管財人においてこれを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

3  第一項の規定によって中断した訴訟手続について前項の規定による受継があるまでに再生手続が終了したときは、第一項の訴訟を提起した再生債権者又は破産管財人は、当該訴訟手続を当然に受継する。

4  第一項の規定によって中断した訴訟手続について第二項の規定による受継があった後に再生手続が終了したときは、次条第一項の規定により中断している場合を除き、当該訴訟手続は中断する。

5  前項の場合又は第一項の訴訟手続が次条第一項の規定により中断した後に再生手続が終了した場合には、第一項の訴訟を提起した再生債権者又は破産管財人において当該訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

6  第二項の場合においては、相手方の第一項の訴訟を提起した再生債権者又は破産管財人に対する訴訟費用請求権は、共益債権とする。



(否認の訴え等の中断及び受継)
第百四十一条
 次の各号に掲げる裁判が取り消された場合には、当該各号に定める訴訟手続は、中断する。
一  監督命令又は第五十六条第一項の規定による裁判 否認権限を有する監督委員が当事者である否認の訴え(第百三十七条第一項の訴えを含む。次号において同じ。)に係る訴訟手続、否認権限を有する監督委員が第百三十八条第一項の規定による参加をした訴訟手続又は否認権限を有する監督委員が受継した前条第一項の訴訟手続
二  管理命令 管財人が当事者である否認の訴えに係る訴訟手続又は管財人が受継した前条第一項の訴訟手続

2  前項の規定によって中断した訴訟手続は、その後、監督委員が第五十六条第一項の規定により否認権を行使する権限を付与された場合又は管財人が選任された場合には、その監督委員又は管財人においてこれを受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。





    第三節 法人の役員等の責任の追及





(法人の役員の財産に対する保全処分)
第百四十二条
 裁判所は、法人である再生債務者について再生手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、再生債務者の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者(以下この条から第百四十五条までにおいて「役員」という。)の責任に基づく損害賠償請求権につき、役員の財産に対する保全処分をすることができる。

2  裁判所は、緊急の必要があると認めるときは、再生手続開始の決定をする前でも、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより又は職権で、前項の保全処分をすることができる。

3  第一項に規定する場合において管財人が選任されていないとき、又は前項に規定する場合において保全管理人が選任されていないときは、再生債権者も、第一項又は前項の申立てをすることができる。

4  裁判所は、第一項又は第二項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。

5  第一項若しくは第二項の規定による保全処分又は前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

6  前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

7  第五項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項の規定は、適用しない。



(損害賠償請求権の査定の申立て等)
第百四十三条
 裁判所は、法人である再生債務者について再生手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判をすることができる。

2  前項に規定する場合において、管財人が選任されていないときは、再生債権者も、同項の申立てをすることができる。

3  第一項の申立てをするときは、その原因たる事実を疎明しなければならない。

4  裁判所は、職権で査定の手続を開始する場合には、その旨の決定をしなければならない。

5  第一項の申立てがあったとき、又は職権による査定の手続の開始決定があったときは、時効の中断に関しては、裁判上の請求があったものとみなす。



(損害賠償請求権の査定に関する裁判)
第百四十四条
 前条第一項の査定の裁判及び同項の申立てを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならない。

2  裁判所は、前項の決定をする場合には、役員を審尋しなければならない。

3  前条第一項の査定の裁判があった場合には、その決定書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項の規定は、適用しない。



(査定の裁判に対する異議の訴え)
第百四十五条
 第百四十三条第一項の査定の裁判に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。

2  前項の訴えは、再生裁判所が管轄する。

3  第一項の訴え(次項の訴えを除く。)は、これを提起する者が、役員であるときは第百四十三条第一項の申立てをした者を、同項の申立てをした者であるときは役員を、それぞれ被告としなければならない。

4  職権でされた査定の裁判に対する第一項の訴えは、これを提起する者が、役員であるときは再生債務者等を、再生債務者等であるときは役員を、それぞれ被告としなければならない。



第百四十六条
 前条第一項の訴えの口頭弁論は、同項の期間を経過した後でなければ開始することができない。

2  前条第一項の訴えが数個同時に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。この場合においては、民事訴訟法第四十条第一項 から第三項 までの規定を準用する。

3  前条第一項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、査定の裁判を認可し、変更し、又は取り消す。

4  査定の裁判を認可し、又は変更した判決は、強制執行に関しては、給付を命ずる判決と同一の効力を有する。



(査定の裁判の効力)
第百四十七条
 第百四十五条第一項の訴えが、同項の期間内に提起されないとき、又は却下されたときは、査定の裁判は、給付を命ずる確定判決と同一の効力を有する。





    第四節 担保権の消滅





(担保権消滅の許可等)
第百四十八条
 再生手続開始当時再生債務者の財産の上に第五十三条第一項に規定する担保権(以下この条、次条及び第百五十二条において「担保権」という。)が存する場合において、当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、再生債務者等は、裁判所に対し、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産の上に存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる。

2  前項の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一  担保権の目的である財産の表示
二  前号の財産の価額
三  消滅すべき担保権の表示
四  前号の担保権によって担保される債権の額

3  第一項の許可の決定があった場合には、その決定書を、前項の書面(以下この条及び次条において「申立書」という。)とともに、当該申立書に記載された同項第三号の担保権を有する者(以下この条から第百五十三条までにおいて「担保権者」という。)に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項の規定は、適用しない。

4  第一項の許可の決定に対しては、担保権者は、即時抗告をすることができる。

5  前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を担保権者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項の規定は、適用しない。

6  第二項第三号の担保権が根抵当権である場合において、根抵当権者が第三項の規定による送達を受けた時から二週間を経過したときは、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。

7  民法第三百九十八条ノ二十第二項 の規定は、第一項の許可の申立てが取り下げられ、又は同項の許可が取り消された場合について準用する。



(価額決定の請求)
第百四十九条
 担保権者は、申立書に記載された前条第二項第二号の価額(第百五十一条及び第百五十二条において「申出額」という。)について異議があるときは、当該申立書の送達を受けた日から一月以内に、担保権の目的である財産(次条において「財産」という。)について価額の決定を請求することができる。

2  前条第一項の許可をした裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、担保権者の申立てにより、前項の期間を伸長することができる。

3  第一項の規定による請求(以下この条から第百五十二条までにおいて「価額決定の請求」という。)に係る事件は、再生裁判所が管轄する。

4  価額決定の請求をする者は、その請求に係る手続の費用として再生裁判所の定める金額を予納しなければならない。

5  前項に規定する費用の予納がないときは、再生裁判所は、価額決定の請求を却下しなければならない。



(財産の価額の決定)
第百五十条
 価額決定の請求があった場合には、再生裁判所は、当該請求を却下する場合を除き、評価人を選任し、財産の評価を命じなければならない。

2  前項の場合には、再生裁判所は、評価人の評価に基づき、決定で、財産の価額を定めなければならない。

3  担保権者が数人ある場合には、前項の決定は、担保権者の全員につき前条第一項の期間(同条第二項の規定により期間が伸長されたときは、その伸長された期間。第百五十二条第一項において「請求期間」という。)が経過した後にしなければならない。この場合において、数個の価額決定の請求事件が同時に係属するときは、事件を併合して裁判しなければならない。

4  第二項の決定は、価額決定の請求をしなかった担保権者に対しても、その効力を有する。

5  価額決定の請求についての決定に対しては、再生債務者等及び担保権者は、即時抗告をすることができる。

6  価額決定の請求についての決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を再生債務者等及び担保権者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項の規定は、適用しない。



(費用の負担)
第百五十一条
 価額決定の請求に係る手続に要した費用は、前条第二項の決定により定められた価額が、申出額を超える場合には再生債務者の負担とし、申出額を超えない場合には価額決定の請求をした者の負担とする。ただし、申出額を超える額が当該費用の額に満たないときは、当該費用のうち、その超える額に相当する部分は再生債務者の負担とし、その余の部分は価額決定の請求をした者の負担とする。

2  前条第五項の即時抗告に係る手続に要した費用は、当該即時抗告をした者の負担とする。

3  第一項の規定により再生債務者に対して費用請求権を有する者は、その費用に関し、次条第一項の規定により納付された金銭について、他の担保権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。

4  次条第四項の場合には、第一項及び第二項の費用は、これらの規定にかかわらず、再生債務者の負担とする。この場合においては、再生債務者に対する費用請求権は、共益債権とする。



(価額に相当する金銭の納付等)
第百五十二条
 再生債務者等は、請求期間内に価額決定の請求がなかったとき、又は価額決定の請求のすべてが取り下げられ、若しくは却下されたときは申出額に相当する金銭を、第百五十条第二項の決定が確定したときは当該決定により定められた価額に相当する金銭を、裁判所の定める期限までに裁判所に納付しなければならない。

2  担保権者の有する担保権は、前項の規定による金銭の納付があった時に消滅する。

3  第一項の規定による金銭の納付があったときは、裁判所書記官は、消滅した担保権に係る登記又は登録の抹消を嘱託しなければならない。

4  再生債務者等が第一項の規定による金銭の納付をしないときは、裁判所は、第百四十八条第一項の許可を取り消さなければならない。



(配当等の実施)
第百五十三条
 裁判所は、前条第一項の規定による金銭の納付があった場合には、次項に規定する場合を除き、配当表に基づいて、担保権者に対する配当を実施しなければならない。

2  担保権者が一人である場合又は担保権者が二人以上であって前条第一項の規定により納付された金銭で各担保権者の有する担保権によって担保される債権及び第百五十一条第一項の規定により再生債務者の負担すべき費用を弁済することができる場合には、裁判所は、当該金銭の交付計算書を作成して、担保権者に弁済金を交付し、剰余金を再生債務者等に交付する。

3  民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第八十五条 及び第八十八条 から第九十二条 までの規定は第一項 の配当の手続について、同法第八十八条 、第九十一条及び第九十二条の規定は前項の規定による弁済金の交付の手続について準用する。





   第七章 再生計画





    第一節 再生計画の条項





(再生計画の条項)
第百五十四条
 再生計画においては、再生債権者の権利の全部又は一部を変更する条項並びに共益債権及び一般優先債権の弁済に関する条項を定めなければならない。

2  債権者委員会が再生計画で定められた弁済期間内にその履行を確保するため監督その他の関与を行う場合において、再生債務者がその費用の全部又は一部を負担するときは、その負担に関する条項を定めなければならない。

3  第百六十六条第一項の規定による裁判所の許可があった場合には、再生計画の定めによる資本の減少に関する条項を定めることができる。この場合においては、株式の併合に関する条項又は再生債務者が発行する株式の総数についての定款の変更に関する条項をも定めることができる。



(再生計画による権利の変更)
第百五十五条
 再生計画による権利の変更の内容は、再生債権者の間では平等でなければならない。ただし、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合又は少額の再生債権若しくは第八十四条第二項に掲げる請求権について別段の定めをし、その他これらの者の間に差等を設けても衡平を害しない場合は、この限りでない。

2  再生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、特別の事情がある場合を除き、再生計画認可の決定の確定から十年を超えない範囲で、その債務の期限を定めるものとする。

3  再生手続開始前の罰金等については、再生計画において減免その他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。



(権利の変更の一般的基準)
第百五十六条
 再生債権者の権利を変更する条項においては、債務の減免、期限の猶予その他の権利の変更の一般的基準を定めなければならない。



(届出再生債権者等の権利に関する定め)
第百五十七条
 再生債権者の権利を変更する条項においては、届出再生債権者及び第百一条第三項の規定により認否書に記載された再生債権者の権利のうち変更されるべき権利を明示し、かつ、前条の一般的基準に従って変更した後の権利の内容を定めなければならない。ただし、第百五十九条及び第百六十条第一項に規定する再生債権については、この限りでない。

2  前項に規定する再生債権者の権利で、再生計画によってその権利に影響を受けないものがあるときは、その権利を明示しなければならない。



(債務の負担及び担保の提供に関する定め)
第百五十八条
 再生債務者以外の者が債務を引き受け、又は保証人となる等再生のために債務を負担するときは、再生計画において、その者を明示し、かつ、その債務の内容を定めなければならない。

2  再生債務者又は再生債務者以外の者が、再生のために担保を提供するときは、再生計画において、担保を提供する者を明示し、かつ、担保権の内容を定めなければならない。



(未確定の再生債権に関する定め)
第百五十九条
 異議等のある再生債権で、その確定手続が終了していないものがあるときは、再生計画において、その権利確定の可能性を考慮し、これに対する適確な措置を定めなければならない。



(別除権者の権利に関する定め)
第百六十条
 別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定していない再生債権を有する者があるときは、再生計画において、その債権の部分が確定した場合における再生債権者としての権利の行使に関する適確な措置を定めなければならない。

2  前項に規定する再生債権を担保する根抵当権の元本が確定している場合には、その根抵当権の被担保債権のうち極度額を超える部分について、第百五十六条の一般的基準に従い、仮払に関する定めをすることができる。この場合においては、当該根抵当権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定した場合における精算に関する措置をも定めなければならない。



(資本の減少等に関する定め)
第百六十一条
 再生計画によって株式会社である再生債務者の資本を減少するときは、減少すべき資本の額及び次の各号に掲げる場合における当該各号に定める事項を定めなければならない。
一  株式の消却をする場合 消却すべき株式の種類及び数並びに消却の方法
二  資本の欠損の補てんに充てる場合 補てんに充てるべき金額

2  再生計画によって再生債務者の株式の併合をするときは、その方法を定めなければならない。

3  再生計画によって再生債務者が発行する株式の総数についての定款の変更をするときは、その変更の内容を定めなければならない。



(特別利益の供与の無効)
第百六十二条
 再生債務者又は第三者が、再生計画の定めによらないで、ある再生債権者に特別の利益を与える行為は、無効とする。





    第二節 再生計画案の提出


(再生計画案の提出時期)
第百六十三条
 再生債務者等は、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出しなければならない。

2  再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)又は届出再生債権者は、裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出することができる。

3  裁判所は、申立てにより又は職権で、前二項の規定により定めた期間を伸長することができる。



(再生計画案の事前提出)
第百六十四条
 再生債務者等は、前条第一項の規定にかかわらず、再生手続開始の申立て後債権届出期間の満了前に、再生計画案を提出することができる。

2  前項の場合には、第百五十七条及び第百五十九条に規定する事項を定めないで、再生計画案を提出することができる。この場合においては、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、これらの事項について、再生計画案の条項を補充しなければならない。



(債務を負担する者等の同意)
第百六十五条
 第百五十八条に規定する債務の負担又は担保の提供についての定めをした再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、当該債務を負担し、又は当該担保を提供する者の同意を得なければならない。

2  第百六十条第二項の仮払に関する定めをした再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、当該定めに係る根抵当権を有する者の同意を得なければならない。



(資本の減少等を定める条項に関する許可)
第百六十六条
 第百五十四条第三項に規定する条項を定めた再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、裁判所の許可を得なければならない。

2  裁判所は、株式会社である再生債務者がその財産をもって債務を完済することができない場合に限り、前項の許可をすることができる。

3  第一項の許可の決定があった場合には、その決定書を当該許可の申立てをした者に、その決定の要旨を記載した書面を株主に、それぞれ送達しなければならない。この場合における株主に対する送達については、第四十三条第四項及び第五項の規定を準用する。

4  第一項の規定による許可の決定に対しては、株主は、即時抗告をすることができる。



(再生計画案の修正)
第百六十七条
 再生計画案の提出者は、裁判所の許可を得て、再生計画案を修正することができる。ただし、再生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、この限りでない。



(再生債務者の労働組合等の意見)
第百六十八条
 裁判所は、再生計画案について、労働組合等の意見を聴かなければならない。前条の規定による修正があった場合における修正後の再生計画案についても、同様とする。





    第三節 再生計画案の決議





(決議に付する旨の決定)
第百六十九条
 再生計画案の提出があったときは、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該再生計画案を決議に付する旨の決定をする。
一  一般調査期間が終了していないとき。
二  財産状況報告集会における再生債務者等による報告又は第百二十五条第一項の報告書の提出がないとき。
三  裁判所が再生計画案について第百七十四条第二項各号(第三号を除く。)に掲げる要件のいずれかを満たさないものと認めるとき。
四  第百九十一条第二号の規定により再生手続を廃止するとき。

2  裁判所は、前項の決議に付する旨の決定において、議決権を行使することができる再生債権者(以下「議決権者」という。)の議決権行使の方法として、次に掲げる方法のいずれかを定めなければならない。
一  債権者集会の期日において議決権を行使する方法
二  書面等投票(書面その他の最高裁判所規則で定める方法のうち裁判所の定めるものによる投票をいう。)により裁判所の定める期間内に議決権を行使する方法
三  前二号に掲げる方法のうち議決権者が選択するものにより議決権を行使する方法。この場合において、前号の期間の末日は、第一号の債権者集会の期日より前の日でなければならない。

3  裁判所は、第一項の決議に付する旨の決定をした場合には、再生計画案又はその要旨を記載した書面を第百十五条第一項に規定する者(同条第二項に規定する者を除く。)に送達しなければならない。この場合においては、第百二条第四項及び第五項の規定を準用する。

4  裁判所は、議決権行使の方法として第二項第二号又は第三号に掲げる方法を定めたときは、その旨を公告し、かつ、議決権者に対して、同項第二号に規定する書面等投票は裁判所の定める期間内に限りすることができる旨を記載した書面を送達しなければならない。この場合においては、第百二条第四項及び第五項の規定を準用する。

5  裁判所は、議決権行使の方法として第二項第二号に掲げる方法を定めた場合において、第百十四条前段の申立てをすることができる者が前項の期間内に再生計画案の決議をするための債権者集会の招集の申立てをしたときは、議決権行使の方法につき、当該定めを取り消して、第二項第一号又は第三号に掲げる方法を定めなければならない。



(債権者集会が開催される場合における議決権の額の定め方等)
第百七十条
 裁判所が議決権行使の方法として前条第二項第一号又は第三号に掲げる方法を定めた場合においては、再生債務者等又は届出再生債権者は、債権者集会の期日において、届出再生債権者の議決権につき異議を述べることができる。ただし、第百四条第一項の規定によりその額が確定した届出再生債権者の議決権については、この限りでない。

2  前項本文に規定する場合においては、議決権者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額に応じて、議決権を行使することができる。
一  第百四条第一項の規定によりその額が確定した議決権を有する届出再生債権者 確定した額
二  前項本文の異議のない議決権を有する届出再生債権者 届出の額
三  前項本文の異議のある議決権を有する届出再生債権者 裁判所が定める額。ただし、裁判所が議決権を行使させない旨を定めたときは、議決権を行使することができない。

3  裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも前項第三号の規定による決定を変更することができる。



(債権者集会が開催されない場合における議決権の額の定め方等)
第百七十一条
 裁判所が議決権行使の方法として第百六十九条第二項第二号に掲げる方法を定めた場合においては、議決権者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額に応じて、議決権を行使することができる。
一  第百四条第一項の規定によりその額が確定した議決権を有する届出再生債権者 確定した額
二  届出再生債権者(前号に掲げるものを除く。) 裁判所が定める額。ただし、裁判所が議決権を行使させない旨を定めたときは、議決権を行使することができない。

2  裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも前項第二号の規定による決定を変更することができる。



(代理人による議決権行使)
第百七十二条
 議決権者は、代理人をもってその議決権を行使することができる。



(再生計画案の可決の要件)
第百七十二条の二
 再生計画案を可決するには、次に掲げる同意がなければならない。
一  議決権者(債権者集会に出席し、又は第百六十九条第二項第二号に規定する書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意
二  議決権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する者の同意



(再生計画案の変更)
第百七十二条の三
 再生計画案の提出者は、議決権行使の方法として第百六十九条第二項第一号又は第三号に掲げる方法が定められた場合には、再生債権者に不利な影響を与えないときに限り、債権者集会において、裁判所の許可を得て、当該再生計画案を変更することができる。



(債権者集会の期日の続行)
第百七十二条の四
 再生計画案についての議決権行使の方法として第百六十九条第二項第一号又は第三号に掲げる方法が定められ、かつ、当該再生計画案が可決されるに至らなかった場合において、第百七十二条の二各号に掲げる同意のいずれかがあり、又は債権者集会の期日において出席した議決権者の過半数であって出席した議決権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者が期日の続行に同意したときは、裁判所は、再生計画案の提出者の申立てにより又は職権で、続行期日を定めて言い渡さなければならない。ただし、続行期日において当該再生計画案が可決される見込みがないことが明らかである場合は、この限りでない。

2  前項本文の場合において、同項本文の再生計画案の可決は、当該再生計画案が決議に付された最初の債権者集会の期日から二月以内にされなければならない。

3  裁判所は、必要があると認めるときは、再生計画案の提出者の申立てにより又は職権で、前項の期間を伸長することができる。ただし、その期間は、一月を超えることができない。



(再生計画案が可決された場合の法人の継続)
第百七十三条
 清算中若しくは特別清算中の法人又は破産宣告後の法人である再生債務者について再生手続が開始された場合において、再生計画案が可決されたときは、社団法人にあっては定款の変更に関する規定に従い、財団法人にあっては主務官庁の認可を得て、法人を継続することができる。

2  前項に規定する主務官庁の権限は、政令の定めるところにより、その全部又は一部を国に所属する行政庁に委任することができる。

3  第一項に規定する主務官庁の権限に属する事務は、政令の定めるところにより、都道府県の知事その他の執行機関において、その全部又は一部を処理することとすることができる。





    第四節 再生計画の認可等





(再生計画の認可又は不認可の決定)
第百七十四条
 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。

2  裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
一  再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
二  再生計画が遂行される見込みがないとき。
三  再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
四  再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。

3  第百十五条第一項に規定する者及び労働組合等は、再生計画案を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができる。

4  再生計画の認可又は不認可の決定があった場合には、第百十五条第一項に規定する者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。

5  前項に規定する場合には、同項の決定があった旨を労働組合等に通知しなければならない。



(再生計画認可の決定等に対する即時抗告)
第百七十五条
 再生計画の認可又は不認可の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

2  議決権を有しなかった再生債権者が前項の即時抗告をするには、再生債権者であることを疎明しなければならない。

3  前項の規定は、第一項の即時抗告についての裁判に対する第十九条において準用する民事訴訟法第三百三十六条 の規定による抗告及び同法第三百三十七条 の規定による抗告の許可の申立てについて準用する。



(再生計画の効力発生の時期)
第百七十六条
 再生計画は、認可の決定の確定により、効力を生ずる。



(再生計画の効力範囲)
第百七十七条
 再生計画は、再生債務者、すべての再生債権者及び再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する。

2  再生計画は、別除権者が有する第五十三条第一項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。



(再生債権の免責)
第百七十八条
 再生計画認可の決定が確定したときは、再生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利を除き、再生債務者は、すべての再生債権について、その責任を免れる。ただし、再生手続開始前の罰金等については、この限りでない。



(届出再生債権者等の権利の変更)
第百七十九条
 再生計画認可の決定が確定したときは、届出再生債権者及び第百一条第三項の規定により認否書に記載された再生債権を有する再生債権者の権利は、再生計画の定めに従い、変更される。

2  前項に規定する再生債権者は、その有する債権が確定している場合に限り、再生計画の定めによって認められた権利を行使することができる。



(再生計画の条項の再生債権者表への記載等)
第百八十条
 再生計画認可の決定が確定したときは、裁判所書記官は、再生計画の条項を再生債権者表に記載しなければならない。

2  前項の場合には、再生債権に基づき再生計画の定めによって認められた権利については、その再生債権者表の記載は、再生債務者、再生債権者及び再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者に対して、確定判決と同一の効力を有する。

3  第一項の場合には、前項の権利で金銭の支払その他の給付の請求を内容とするものを有する者は、再生債務者及び再生のために債務を負担した者に対して、その再生債権者表の記載により強制執行をすることができる。ただし、民法第四百五十二条 及び第四百五十三条 の規定の適用を妨げない。



(届出のない再生債権等の取扱い)
第百八十一条
 再生計画認可の決定が確定したときは、次に掲げる再生債権は、第百五十六条の一般的基準に従い、変更される。
一  再生債権者がその責めに帰することができない事由により債権届出期間内に届出をすることができなかった再生債権で、その事由が第九十五条第四項に規定する決定前に消滅しなかったもの
二  前号の決定後に生じた再生債権
三  第百一条第三項に規定する場合において、再生債務者が同項の規定による記載をしなかった再生債権

2  前項第三号の規定により変更された後の権利については、再生計画で定められた弁済期間が満了する時(その期間の満了前に、再生計画に基づく弁済が完了した場合又は再生計画が取り消された場合にあっては弁済が完了した時又は再生計画が取り消された時)までの間は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。

3  再生計画認可の決定が確定した場合には、再生手続開始前の罰金等についても、前項と同様とする。



(別除権者の再生計画による権利の行使)
第百八十二条
 再生債権者が第五十三条第一項に規定する担保権を有する場合には、その行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定した場合に限り、その債権の部分について、認可された再生計画の定めによって認められた権利又は前条第一項の規定により変更された後の権利を行使することができる。ただし、その担保権が根抵当権である場合において、再生計画に第百六十条第二項の規定による仮払に関する定め及び精算に関する措置の定めがあるときは、その定めるところによる。



(再生計画により資本の減少等がされた場合の取扱い)
第百八十三条
 第百五十四条第三項前段の規定により再生計画において資本の減少を定めたときは、認可された再生計画の定めによって、資本の減少をすることができる。

2  前項の場合においては、商法第二百十三条第二項 及び第三項 、第三百七十六条並びに第三百八十条の規定は、適用しない。

3  第百五十四条第三項後段の規定により再生計画において株式の併合を定めたときは、認可された再生計画の定めによって、株式の併合をすることができる。

4  前項の場合においては、商法第二百二十条第二項 に定めた事件は、再生裁判所が管轄する。

5  第百五十四条第三項後段の規定により再生計画において再生債務者が発行する株式の総数について定款を変更することを定めたときは、定款は、再生計画認可の決定が確定した時に再生計画の定めによって変更される。

6  第一項、第三項又は前項の規定により、認可された再生計画の定めによる資本の減少、株式の併合又は定款の変更があった場合には、当該事項に係る登記の申請書には、再生計画認可の決定書の謄本又は抄本を添付しなければならない。



(中止した手続の失効)
第百八十四条
 再生計画認可の決定が確定したときは、第三十九条第一項の規定により中止した手続は、その効力を失う。ただし、同条第二項の規定によって続行された手続については、この限りでない。

2  前項の規定によって効力を失った破産手続における財団債権(破産法第四十七条第二号 に掲げるものを除く。)は、共益債権とする。



(不認可の決定が確定した場合の再生債権者表の記載の効力)
第百八十五条
 再生計画不認可の決定が確定したときは、確定した再生債権については、再生債権者表の記載は、再生債務者に対し、確定判決と同一の効力を有する。ただし、再生債務者が第百二条第二項又は第百三条第四項の規定による異議を述べたときは、この限りでない。

2  前項の場合には、再生債権者は、再生債務者に対し、再生債権者表の記載により強制執行をすることができる。


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